So-net無料ブログ作成

もっとも当たりたくない地雷 [救急医療]

↓ポチッとランキングにご協力を m(_ _)m

私が最も当たりたくない地雷症例がある。それは、急性喉頭蓋(こうとうがい)炎だ。喉頭蓋とは、声帯の少し手前にあって、物を飲み込むときに気管の中に入り込まないように蓋(ふた)の役割をするものである。下図参照。

そこに細菌感染が起きると、喉頭蓋炎がぺらっとした蓋ではなくて、さくらんぼのように丸々と腫れあがり気道を閉塞して窒息死に至らしめる可能性のある疾患だ。しかも、その閉塞機転が、あっという間の短時間でおきてしまうこともあり、まさに地雷的疾患だ。実際に、その腫れあがった喉頭蓋をアップしてくれているサイトがあるので、ここに引用しておく。→引用:腫れあがった喉頭蓋の写真

私は、専属と兼任の時期を含めて、救急外来(特に内科系)で、ずいぶんと数多くの救急患者の初療を行い続けたきたが、急性喉頭蓋炎を疑い、耳鼻科の先生を緊急コールしたのは、たった2回だけである。一つは、軽症で窒息には至らずにすんだもの、もう一つは、結局はずれであった。耳鼻科の先生に夜間に来ていただいたのは、申し訳なかったと思うが、やはり、地雷にはまらないためには、Thinking the worst scenario の精神が必要だ。急性喉頭蓋炎を疑う場合には、緊急で耳鼻科医と気道確保のエキスパートにアクセスすることを考えなければならない

かつて勤務してた病院で、気道確保のエキスパートであった救急部のS先生がいてくれたために、窒息を免れた症例があった。

41歳男性 主訴:呼吸困難

3日前から咽頭痛。本日になり、急に喉がつまったような呼吸困難感が出現してきたため救急車で昼間の救急部に来院。体温は38.5度。呼吸回数32回/分。血圧162/98。脈拍120/分。酸素飽和度100%。息を吸うと嗄声気味。現状は、座位の姿勢で気道は確保できてる。急性喉頭蓋炎を疑い、耳鼻科医にコンサルト。頚部側面で肥大した喉頭蓋を認めること(図)、耳鼻科医による気管支ファイバー直視で、確定診断となった。

さて、ここからがこの症例の修羅場であった。

15:35 耳鼻科医による気管切開の方針が決まった。
15:40 患者が座位より臥位へ体位変換
       突如、患者が窒息状態・・・!!!!
15:4X 救急部S先生(ぴか一の気道確保のエキスパート)
        による、間一髪の気管挿管に成功。


    後でS先生に伺ったところによると
      気泡がでているところに、スタイレットを先行させた
    細め(内径6mm)のチューブをもっていったら、
    なんとか挿管に成功したとのことでした。


    お見事としかいいようがありません。
    私がそのとき居あわせていてもそんな芸当は
    できなかったでしょう・・・・


16:15 鎮静下で、耳鼻科医による気管切開術終了。 


そのまま、耳鼻科入院となり、抗生剤による治療が行われ、患者は、後日後遺症なく退院した。 体位変換が窒息を誘発したようです。

もし、S先生程の技術をもったものが回りにいなかったら・・

輪状甲状間膜穿刺を間髪入れずにやらなければ、

窒息による脳障害は回避できなかったでしょう。

でも、どれだけの医師が輪状甲状間膜穿刺を実際に患者におこなったことがあるでしょうか?

私はやったことありません。

また、通常の気管切開は、時間をそこそこ要するので、窒息状態ではやってられません。

どうも急性喉頭蓋炎に体位変換は危ないようです。ネット検索してみたら、急性喉頭蓋炎による窒息の1事例というサイトが見つかり、そこで症例を報告していました。 このサイトの中から、興味深い一部分を引用させていただきました。

患者の最も楽な姿勢をとり、急激な体位変換は避けること。体位変換により喉頭蓋が喉頭に嵌頓して窒息する危険性があるためである。窒息は患者を仰臥位にしたときに多いが、いつどこで窒息するか全く予想がつかない


私は、こんなヘビーな急性喉頭蓋炎の患者に遭遇したことはありません。でも、いつ遭遇するかわかりません。もうそのこと自体が地雷的です。現在の勤務先には、転ばぬ先の杖として、緊急で輪状甲状間膜穿刺ができるようにある程度の物品の用意はしてありますが、いざ自分がこの疾患に遭遇したとき、うまくできるかどうか自信がありません。

知識は予習できても、

医療の実践は常にぶっつけ本番なのです。

ほんとに怖いです。

参考までに、急性喉頭蓋炎にまつわる訴訟に関連するネット資料を2つほどあげておきました。患者家族の心情も理解はできますが、やはり、疾患頻度がそう多くないために、いざ気道緊急事態が発生してしまったときその危機的状況を回避できるスキルをもった医師のほうが、現実的にははるかに少数で、平均水準の医師は、この回避スキルは持ち合わせていないというのが現状ではないでしょうか。個人的には、医療者側敗訴は、厳しすぎると思っています。

急性喉頭蓋炎訴訟 被告作成のHP

急性喉頭蓋炎民事訴訟の判例

注)当ブログでは、こられの訴訟事例に関連したコメントにつきましては、公表いたしません。あらかじめご承知おきください。

コメント一覧
・以前より、気道確保のことで、喉頭蓋炎がきたらどうしようと思ていました。やはり、私の不安は「正等」なものだと「安心」しました。一応当院にはトラヘルパーも用意していますが、全ての当直医がコレを使えるわけではないし、私も緊急事態にできるかどうか不安です、と言うかか、きっとあわててできないでしょう。
・それにしても、挿管のエキスパートの先生の「気泡がでているところに、スタイレットを先行させた
細め(内径6mm)のチューブをもっていったら、
なんとか挿管に成功した」というのは、すごいですね。

written by ミチバ / 2007.04.09 22:21
ミチバ様

コメントありがとうございます。そうですよねえ、あわてますよねえ。私のところでは、そんなこんなで、穿刺ができる人形をレールダル社から購入しちゃいました。ときどき遊んでます。でも、本番がきたら、どうしようって感じです。

written by なんちゃって救急医 / 2007.04.09 22:35
こわいですねー。
実は自分がコレになりかけたことがあって、耳鼻科を受診しステロイドの点滴をしてもらい、一時的に息が楽になりましたが、2時間くらいしか持たず。
もし夜中に呼吸が苦しくなったら救急車で大学病院に行ってくださいと耳鼻科の先生に言われました。救急車で行っても気道確保の挿達人がいなかったら・・・!?
でも、大事に至らず、自然によくなりました。

ブログランキング急上昇中ですね!
このブログは多くの医師に読んで欲しいと思います。
今後も応援しています。

 

 

 

written by 春野ことり / 2007.04.10 17:56
ことり先生

おー、それはそれは、大変だったと思います。

応援ありがとうございます。これからもネタを小出ししていきたいと思います。
written by なんちゃって救急医 / 2007.04.10 20:16
こんにちは
急性喉頭蓋炎は臨床上もっとも怖いレベルの疾患であると認識しています。でも、これを後遺症なく救命できないと、訴訟になるんですね...

拙ブログよりトラックバックさせていただきました。
written by befu / 2007.04.11 13:49
befu様

コメント、トラックバックありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。
written by なんちゃって救急医 / 2007.04.11 16:29

トラックバック一覧

恐ろしい疾患 (いなか小児科医)
http://swedenhouse-oita.cocolog-nifty.com/pediatrics/2007/04/post_1.html

 


コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

コメント 1

コメントの受付は締め切りました
てけてけ

先日これに罹ってネットで調べていて、ここにたどり着きました
内科しかいない救急外来ってだめですね!
40℃近い高熱が出れば体もダルくなるのに
新型インフルの症状に似てるからってインフルの検査と
ノドの奥の細菌検査をして・・・単なる風邪の診断・・・
翌日、唾液を飲み込む事すら困難になり近所の耳鼻咽喉科に
行ったら気道が90%以上塞がっていると・・・
総合病院に連絡を取りベッドを確保してもらい移動しましたが
そこでも夜睡眠中に緊急事態になったら対応できるか心配と・・・
結局大学病院(手数が多いから緊急事態でも乗り切れる)
に緊急入院してステロイドと抗生剤の点滴3日で退院し
内服薬貰いましたが、翌日に再燃(39度↑)で再入院!
退院まで2週間掛かりました。
ただ・・・白い点(のう胞?まさかガン?)の様なものが残ったままなのが心配で・・・

国立医療センターでも救急外来で内科だと見落とされるんですね・・・
恐るべし喉頭蓋炎!
by てけてけ (2009-05-28 01:03) 

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。