So-net無料ブログ作成

初回検査異常なし≠緊急性なし [救急医療]

↓ポチッとランキングにご協力を m(_ _)m

皆様は、今朝方のこんな新聞記事をごらんになられたでしょうか?

○○病院 心筋梗塞を狭心症と誤診!患者死亡

患者 A氏(53歳)は、胸痛を訴え、○○病院の時間外外来を独歩で22時に受診した。担当した B医師(28歳)は、心電図、レントゲンおよび血液検査を行い、いずれも異常を認めなかったため、狭心症と診断し、明朝の循環器内科を再診するように指示のうえ、帰宅させた。自宅に帰宅後、突然倒れ、心肺停止状態となったため、救急車で○○病院を翌午前2時に再診。心肺蘇生処置を施すも反応なく、午前3時53分に死亡した。解剖の結果、左冠状動脈に血栓性閉塞を認め、急性心筋梗塞による死亡と診断された。患者の妻は、短時間の診察で狭心症と診断し帰宅と判断したのは、医師の過失として、東京地裁に提訴した。なお、担当した B医師は、初期研修の2年を終えたばかりで、先月から一人で時間外当直を任されるようになったばかりであったと言う。○○病院 D事務局長のコメント:訴状が届いていないのでコメントすることはありません。

いかがでしたでしょうか?ごめんなさい。これはフィクションでした。m(_ _)m

しかしながら、普段、循環器となじみの薄い先生方の多くは、循環器系の緊急性を、心電図、採血などの検査をよりどころとして、これらに異常がない=緊急性はないと考えておられるのではないかと思います。循環器系の医師ならば、怪しい病歴一つで、たとえ検査に異常がなくても、急性冠症候群として緊急入院適応があると判断します。このあたりの認識の違いが、時間外診療で心筋梗塞の地雷にはまるかどうかの分かれ目になるのではないでしょうか?

さて、次は自検例です。

59歳男性 主訴:突然の呼吸苦

高血圧で開業医かかりつけ。40本/日のヘビースモーカー。朝6時ごろ、起床後しばらくしてから、突然の呼吸苦が出現したため、救急車で来院。来院時、ほぼ症状は消失。

救急車対応を担当したのは、3年目内科医師。消化器内科後期研修中。心電図は下図の通り、血液データ、胸部レントゲンには異常なし。胸部単純CTまで施行。7時に出勤してきた放射線科部長をつかまえ、CTを読影してもらったところ、慢性気管支炎とのコメントを得た。担当した医師は、朝9時の呼吸器内科外来に患者をそのまま紹介した。紹介をうけた呼吸器内科医は、一通り呼吸器関連の検査計画をたてつつ、狭心症除外のための運動負荷心電図検査を2日後に予約し、帰宅となった。

2日後、運動負荷心電図検査日

たまたま、私が検査担当日であった。
カルテの病歴を眺めた。初回時の心電図を眺めた。いやな予感がした。

安静時心電図が、機械よりプリントアウトされてきた。

私のいやな予感が現実のものとなった

「あ~~~、MI(心筋梗塞のこと)起こしてるわ~~~~~」

すぐに、患者に今日の運動負荷試験は中止のうえ、直ちに入院が必要であることを説明した。
入院の同意を得た後、救急車来院時の症状を自分なりに再聴取してみた。

左肩への放散(+)、冷や汗(+)、嘔気(+)、胸痛は漠然としたものであった。呼吸苦(+)
など、怪しい病歴が続々とゲットできた。結果を知った上での誘導尋問的問診のためそう感じただけかもしれない。
それでも、初回来院時のカルテにかかれた問診だけではあきらかに不十分であったと私は感じた。

その日のうちに、血管造影検査を行い、左冠状動脈(#7)の99%閉塞が見つかり、そこを責任病変と判断し、カテーテル治療が行われた。治療は、合併症なく無事終了した。


急性冠症候群といわれる心臓緊急の病態がある。これは、はっきりと心筋梗塞として客観的な検査異常が含まれるものだけではないのだ。上記症例のように、初回の検査だけでは、客観的異常が捕まらない場合もある。そういう状態でうかつに帰してしまうと、フィクション事例のようなものがまさに現実となるであろう。自検例でも、検査に異常がなかったため、心臓緊急と認識できずに呼吸器疾患を優先してしまったのだ。患者が自宅で急変しなくてよかった。まさにヒヤリハット事例であった。

では、(まだ検査に異常をきたしていない)急性冠症候群という地雷を踏まないためには、どうしたらいいのか?
それは、
「詳細な病歴聴取、経過観察という時間の利用、血液データ、心電図の経時的フォローアップ」
などを行うことだ

↓参考判例を追記しました(4/14)
胸痛患者肋間神経痛誤診心筋梗塞死亡-医師側敗訴

教訓
急性冠症候群という地雷をふまないためには、
初回検査異常なし≠緊急性なし
ということを肝に銘じるべき

 

 コメント一覧
こわいですねー。
こんな症例もありました。

患者A氏(60歳 男性)
心窩部痛を訴え救急外来受診。当直医B医師に「心筋梗塞の可能性があるから心カテのできる病院へ紹介する」と言われたが
「ワシは胃が痛いんじゃ!心臓なんか悪くない!」
と、医師の言うことを聞かずに帰宅。
その後、自宅で心肺停止となった。
後日、A氏の妻が、A氏が死亡したのはB医師が適切な処置を怠ったためだと訴えた。

日本ではこんな事例でも医師は負けてしまうかも知れません。
written by 春野ことり / 2007.04.10 17:47
ことり先生

いわゆるAMA(Against Medical Advice)のケースですね。訴訟回避には、キーパーソンの出番が欠かせませんね。

ほんと怖いですね。
written by なんちゃって救急医 / 2007.04.10 20:14
初回心電図は微妙ですね。
これだけでは、なんとも言えませんが。
詳細に病歴を取れば、わかりそうな気はしますね、この方の場合は。

初回の前に、更にその前の心電図があって比べたらおかしい、って事になれば話は別ですけどね。

written by Dr. I / 2007.04.11 01:11
Dr.I様

コメントありがとうございます。ご指摘の通りだと思います。
written by なんちゃって救急医 / 2007.04.11 06:57
私も関連病院当直で「腹の中ほどが痛い」と訴える方を診ました。初回心電図で異常なかったのに、2時間後も訴えやまず。再検してAMIでした。
「胸を締め付けるような感じじゃないの?」って聞きましたが、やはり腹部からむしろ背中といわれておりました。
もう少しで外病院に迷惑をかけるとこでした。
written by 脳外科見習い / 2007.04.11 12:54
脳外科見習い様

貴重なご経験ありがとうございます。こちらも勉強になります。
written by なんちゃって救急医 / 2007.04.11 16:25
最新の記事からだんだんと戻っていってこの記事にコメントです。
私は怪しいなとちょっとでも思った患者さんは心電図を1回とった後、電極張りっぱなしで30分後再検というルールを作ってやってます。学生時代アレほど勉強した知識もだんだん霞がかかってきたため^^;バカでもわかる方法と思ってやってますw
T派の増高は自信を持って判断つく場合と、微妙な変化で悩ましい場合とがありますね。そこに慣れる必要があるのかもしれませんが。
精進します^-^
written by アルよし / 2007.04.14 03:04
アルよし様

コメントありがとうございます。私も怪しいと思う人には、比較的短い間隔で心電図を繰り返しています。

written by なんちゃって救急医 / 2007.04.14 08:58


コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

コメント 0

コメントの受付は締め切りました

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。