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尿路結石?に潜む地雷(その2) [救急医療]

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前々回のエントリーでは、尿路結石と紛らわしい大動脈緊急の例を挙げました。本日は、その他のピットフォール的な症例をいくつか紹介してみたいと思います。時間外診療の場で、尿路結石の診断を下すことは、大変多いだけに、似たような例を、皆様方もきっと多く経験されていることであろうと推察します。もし、よろしければ、こんなのもあったよとコメントをいただけるとうれしく思います。

症例1 82歳女性  左側腹部痛

高血圧、高脂血症で近医かかりつけ。糖尿病はない。ADLは完全自立の患者。20年前に脳梗塞の既往あるものの後遺症は残っていない。最近、不整脈を指摘されたというが詳細不明とのこと。担当したのは、そろそろ救急外来での時間外診療に、自信をつけ始めたころの一年次研修医のE先生であった。

バイタルは安定、左背部巧打痛(+)、尿潜血(1+)・・・・・
E先生「尿路結石だろうな。云、間違いない」
自信を持って、指導医のS先生に状況を報告した。
S先生「う~ん、年齢がねえ・・・。LDH537も高いねえ・・・
     なに、不整脈の既往、詳細不明! 今日の心電図は?」
E先生「あ、とってません。今からとります」
心電図ができた。洞調律でとくに問題はなかった。

E先生「いいでしょう。もう、痛み止めで帰ってもらいましょうよ」
最近、自分の診療に自信を持っているだけに、やたら押しが強いE先生。

S先生「いや、この人には、CTを撮ろう。腎機能は大丈夫だね」
E先生「クレアチニン0.79で問題ありませんが、CTとるんですかあ?いらないと思いますよ。」
とやや不機嫌になる。

それでも指導医のS先生は、CTを撮ることを決断した。

CTができた。(下図) 腎梗塞だった。泌尿器科に入院となった。
この日以来、ちょっと天狗になり始めたE先生も、S先生の言うことは何でも聞くようになった。

症例2 28歳女性  左側腹部痛

特に既往歴のない女性。深夜突然発症の左側腹部痛が出現。様子を見ていたが、我慢できずに朝7時半に時間外外来を受診。担当したのは、ずっと夜通し働き続けてダウン気味の一年次研修医のT先生であった。

痛がっているが、バイタルは安定。左背部巧打痛(+)。尿潜血(±)。
T先生は疲れていた。 もう少し引っ張れば、朝だ・・・・・、そんな気持ちが脳裏をよぎった

きっと、尿路結石だろう・・・・。巧打痛がしっかりあるじゃないか」

と自分に言い聞かすように、尿路結石疑いで、痛み止めを使用した。
そして、朝一番で、泌尿器科外来を受診するように段取りを取った。救急外来の朝の申し送りは、そのままそれが通って、患者は泌尿器科外来へ移動していった。 しばらくして、婦人科部長から電話が救急外来に入った。 
「最初、そちらで診た患者さん。卵巣茎捻転で今から緊急手術をすることになりました。」 

泌尿器科の医師が、どうも変だということで、泌尿器科から婦人科へ紹介され、茎捻転の診断がついたとのことであった。」 救急部スタッフが、後からT先生に当時の状況を尋ねた。

T先生「確信したというより、尿路結石であってほしい」という思いのほうが強かったです。
    「やはり、疲れてたんだと思います。速く仕事を終わらせたいという気持ちがありました。」

T先生は、おとなしめだが、まじめな研修医だった。 疲れという身体状況は、やはり判断力にも影響する
一概に、彼を誤診だと攻め立てるのは、酷過ぎると私は思った。

症例3 30歳女性 右側腹部痛

特に既往歴のない女性。 突然発症の右側腹痛が出現。救急車で来院した。担当したのは、救急部レジデント4年目のO医師。救急症例の経験は豊富である。 尿路結石と暫定診断で様子観察を行うことにした。

妊娠は、本人発言で絶対ないと否定されたとのこと。

救急部が他の患者でごったがえしている中、この患者の血圧が低いと報告が入った。

「血圧70台です。」

あわてて、O医師は対応した。CTをとった。腹腔内出血が多量だった。

今度は、あわてて妊娠反応を検査した。陽性だった

すべてが後手後手に回った感じた。子宮外妊娠疑いで、婦人科にコンサルト。緊急手術となった。 なんと、横隔膜着床の子宮外妊娠だった。大変珍しいケースだと婦人科部長が言っていた。上品そうなご婦人で、この人の言うことは間違いないだろうと思ってしまったとO医師は反省をしていた。

「女性を見たら妊娠と思え」という格言を改めてかみしめた症例であった。

症例1は、やはり年齢と不整脈などのバックグラウンドが、尿路結石に飛びつくなのはどうかなあという指導医の感が見事に診断に結びついた例です。 研修医の先生が、実力をつけていく過程で、尿路結石の診断は、避けて通れない道だと思います。このように、指導医のところで修正をかけてあげれるかどうかが指導医側の腕の見せ所といえるのかもしれませんね。

症例2は、疲れているときの心理状況を、自分自身でよく認識して、自分の判断力を過小に考える自己コントロールが地雷を避けるひとつの方法になるのかなあと思います。こういうパターンのエラーは、自分も起こしそうで怖いなあと毎日思っています。

症例3は、型どおり「急性腹症」の枠組みで、妊娠反応をさっさとやっていれば、もうすこし速く対応ができたかもしれなかったケースです。それにしても横隔膜着床なんて・・・・・!!!。人間の体には、何が起こるわからないという謙虚な気持ちを忘れないことが大事なのかもしれませんね。

まとめてみます。

本日の教訓
・尿路結石と似ている腎梗塞を忘れるな!特に高齢者
・妊娠可能な女性には、尿路結石の確診の前に、婦人科緊急を除外せよ!

 コメント一覧
女性の妊娠についてですが・・・
ずっと産婦人科でフォローされていた女性がいて、夜中に腹痛で受診。妊娠は?と聞くと今日の昼受診した産婦人科の診察で子宮内のそうはを受けたとのこと(カルテを見たところ妊娠反応陽性で経過をみていたんだけど、エコーに出てこなかったので流産と判断。そうはしたそうです)。
さすがにこれは妊娠ないだろうと思い腹部単純撮ったけど明らかな異常は無し。腹部所見は筋性防御とまではいかないけど下腹部中心に圧痛著明。採血結果は炎症反応はないけどWBC軽度上昇(確か11000ぐらい)。
なんだか嫌な予感がして、念のため産婦人科の先生に診てもらったら子宮外妊娠の腹腔内出血で即オペって事がありました。
産婦人科受診直後だったし、エコーもされていたので妊娠は無いかな?と思ったけれど自分の嫌な予感が当たってしまって助かりました。
何があろうと妊娠がらみは女性では忘れないと再度身にしみた当直でした^^;
written by アルよし / 2007.05.09 22:15
今回も貴重な症例提示ありがとうございました。
非常に勉強になりました。
2例目の先生の気持ち、よくわかります。
結石の診断にはUSを怠ってはいけないという事でよろしいでしょうか?
written by doctor-d / 2007.05.10 12:39
アルよし様
doctor-d様

コメントありがとうございます。

女性の妊娠ってほんと地雷的なことありますよね・・・

データは知りませんが、経験上、水腎症を確認できるのがルールインにきわめて有効だと感じています。
written by なんちゃって救急医 / 2007.05.10 21:34
管理人様
お疲れさまです。またまた貴重な症例提示ありがとうございます。(その1)のコメで先走って腎梗塞の話を持ち出してしまい、すいませんでした。
尿管結石疑うなら、エコーは必須ですね。結石でも超急性期には水腎症が確認できないこともありますが、確認できない場合はとことん今回挙げられているような他の疾患をルールアウトする姿勢が必要と考えます。

written by おしっこのお医者さん@ / 2007.05.11 00:36
妊娠しているときの腎尿路疾患は悩ましいものがあります。造影不可(順行性も逆行性も)、破砕療法不可。よって結石ができた妊婦は鎮痛(これまた薬はほとんど不可、アセトアミノフェンくらいしか内服はなく、後はペンタゾシンとか、持続硬膜外麻酔とか)して、ひたすら結石が落っこちるのを待つしかありません。この前も妊婦が尿路結石で2週間入院しました。腎盂炎も無症候性細菌尿から、いきなりDICを伴う腎盂腎炎に変身したりするし。
written by 山口(産婦人科) / 2007.05.11 15:50
おしっこのお医者さん様

ありがとうございます。やはり水腎症が診断に有用ということですね。

山口(産婦人科)様

そうですよね。悩ましいですよね。
>DICを伴う腎盂腎炎
ウロゼプと私たちの間では呼んでます。
written by なんちゃって救急医 / 2007.05.11 20:49


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