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あなどれない頭部打撲 [救急医療]

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外科系時間外外来、軽微な頭部打撲の患者も多くやってくる。帰宅する患者のための頭部外傷注意書きをあらかじめ用意してある病院も多いと思う。24時間以内の経過を観察することは重要だ。 しかしながら、脳外科を専門としない医師にとって、頭部打撲の患者を診ることのストレスは多い。外傷初期診療ガイドライン(JATEC教科書)P133の軽症頭部外傷の管理の項を引用する。

軽症でも一過性意識障害や健忘、頭痛を訴えている場合には頭部CT検査が必要である。このような場合でCT検査が撮影できないときには12~24時間、病院内で経過観察する。

とある。CTが取れる施設では、さっさとCTをやるのが無難であろうと思う。

頭部打撲の恐ろしさをまざまざと見せ付けてくれた症例を紹介する。

72歳 女性。 交通事故、頭部打撲

患者が歩行中、徐行中のミニバイクと接触したはずみに転倒。その際に前頭部を強打した。嘔気(+)一過性意識消失(+)。近隣の病院に、救急搬送。搬送直後の意識は清明。その病院の外科当直は、たまたま消化器外科。なお、その病院には脳神経外科医はいない。 担当した外科当直医は、CTを施行した(図中左)。頭部CTには著変なしと判断したが、念のため、そのまま入院させた。入院して約5時間後、意識レベルが低下、瞳孔不同が出現。急遽、脳神経外科医が常駐する当院へ転送となった。当院到着後、直ちに2回目のCTが施行。(図中右) 



急性硬膜下血腫だった

脳外科当直医は、家族に厳しい状況であることを告げた。

残念ながら患者は死亡した。

最初のCTを良く見ると、すでにわずかだが出血が認められている。 このケースは、初療医の見落としであったと指摘されても仕方がないのかもしれない。ただ、普段、頭部CTを見慣れていない医師にとっては、つらいかもしれない。

2006年11月18日読売新聞

橿原署や消防本部などによると、男性は15日午前2時10分ごろ、同署駐車場で頭から血を流しているのが見つかった。同市内の飲食店で飲酒後、店近くの駐車場で転倒、頭などを強打したとみられ、約300メートル離れた署の駐車場に迷い込んだらしい。

 当初は意識があり、署員が氏名と連絡先を聞き出したが、約50分後に意識を失ったため家族を呼び、橿原消防署に搬送を要請した。

 救急隊員は、男性を見て転倒による軽傷と判断。家族が「大淀病院の妊婦が死亡した問題のこともあるので、病院に運んでほしい」などと懇願したが、消防隊員は搬送先を探さず、「朝まで大丈夫なので、様子を見て病院に運んでほしい」と説得して引き揚げた。この際、家族は「私の都合により、救急搬送をお断りします」という内容の「救急搬送承諾書」に署名を求められ、書いたという。

 男性は自宅に戻ったが、朝になっても、意識が戻らず、家族が同市の県立医大病院に搬送。午前11時ごろから手術を受けたが、意識は戻っていない。男性の父親(72)は「近くに医大病院があると何度も頼んだのに搬送してもらえなかった。すぐに病院で治療を受けていればこんな結果にならなかったはず」と憤っている。

 当時の近隣の救急病院の受け入れ状況は不明だが、県内の他の消防本部によると、家族から救急搬送の要望があった場合、断ることはなく、たとえ近隣の病院が満床であっても、見つかるまで受け入れ先を探すという。高橋善康・橿原消防署長は「脳内出血かどうかを見極めるのは難しいが、結果的に判断ミスをした。再発防止に努めたい」と話している。

このケースも頭部打撲による急変だ。救急隊の判断や、家族自身対応の問題などいろいろ論点はあるところであるが、上記症例と共通して言えることは、受傷直後の意識は清明であり、数時間後に急変していることだ。頭部打撲の診療は、診療を「時間軸の1点」で終わらせてはならないことを示している。少なくとも受傷後24時間は、診療を「線の時間軸」で見なければならないと思う。

まとめます。

教訓
頭部打撲は、どんなに軽症であっても、受傷直後の状態よりも受傷後の経過観察が重要

コメント一覧
当直中に診る専門外疾患、特に頭部外傷、怖いです。
先の症例の場合、CTを撮影せず、後で出血が判明したら『ミス』とされるのでしょうし、CT撮影してもごく軽度の異常があるのに見逃し(実際この提示されているCT画像程度の変化なら私も自信ありません)たら、やっぱり『ミス』と言われるのでしょうね。時間外の精査はするのもしないのも怖いです。
手が後ろに回らないようにするにはどうしたらいいでしょう?脳外科医または放射線科医並みの読影能力を持たないといけないってことでしょうか?検査だけはして、脳外科医をコールまたは転送でしょうか?
written by おしっこのお医者さん@ / 2007.05.11 23:04
受傷直後のCTを見ると脳外科医、放射線科医なら見逃さないだろう所見がありますね。しかし、他の科の先生が見たらどうかなあ~?
大変教育的な症例提示ありがとうございました。
written by Tai-chan / 2007.05.11 23:05
 う~~ん・・・、1枚目のCTを見ると硬膜下血腫(Silvius付近から後方)に加え、脳挫傷もあるように見えます(後頭葉)。ですが、これは私が情報を知っているから判断できるんであって、このCTだけを見たときに的確に判断できる自信はありませんね。

 まして受傷後5時間で急変・・・。患者さんももちろんですが、診断された消化器外科医の先生も気の毒としか言いようがありません。
written by 僻地外科医 / 2007.05.11 23:27
受傷直後のCTでは、後方から出血がはじまっているように見えます。打撲は前頭部だから、いわゆるcontre coup (コントレクー)でしょうか?
熟練した放射線技師さんが、こちらが気のつかない所見を指摘してくれる病院もありますね。私は昔アルバイト当直先で、何度か助けてもらいました。
written by moto / 2007.05.12 00:56
アメリカのERでは時差を利用してERでの写真読影をインド、オーストラリアに依頼している施設もあります。
そうすることで誤診を減らそうとしています。参考までにTBさせて頂きました。
written by Tai-chan / 2007.05.12 03:37
一枚目のCTをみると薄い硬膜下血腫と脳腫脹があるようにみえます。ただこれだけで5時間後にこんなに出血が拡大するのは滅多に見ないと思います。肝炎など出血傾向になる基礎疾患があったのでしょうか?

時間帯にもよりますが1枚目のCTからみても、僕でしたらせいぜい3~4時間に一回の神経チェックと翌日CTぐらいの管理にしてしまうかもしれません。恐ろしいですね。
written by 脳外科見習い / 2007.05.12 22:20
おしっこのお医者さん様

>時間外の精査はするのもしないのも怖いです

お気持ちよくわかります。脳外科医に相談できるのがベストなんでしょうけど、あまり無節操に相談するのもいけてないし・・・・。
written by なんちゃって救急医 / 2007.05.13 06:40
Tai-chan様

的確なご指摘だと思います。専門外であるがゆえに見つけられなかったことは免責にしてほしいものですね。

written by なんちゃって救急医 / 2007.05.13 06:42
僻地外科医様

コメントありがとうございます。こういう難しさを非医療者に伝えるのはほんと難しいと思います。
written by なんちゃって救急医 / 2007.05.13 06:45
moto様

>熟練した放射線技師さんが、こちらが気のつかない所見を指摘してくれる病院もありますね

これ、そうですね。たしかに私も助けられた経験があります。
written by なんちゃって救急医 / 2007.05.13 06:46
Tai-chan様

トラックバックありがとうございます。
遠隔画像コンサルトがもっと日本にも普及してほしいものです。
written by なんちゃって救急医 / 2007.05.13 06:48
脳外科見習い様

専門家からのご指摘ありがとうございます。基礎疾患の有無については、明確な記憶はありません。何かあったのかもしれません。ワーファリンとか飲んでいたのかもしれません?

written by なんちゃって救急医 / 2007.05.13 06:51
以前、頭部外傷例でCTが、複数回撮影されている症例をreview しました。そのときの結論は、手術例では、初回のCTが、正常であったものは、ない。というものでした。ただしこれは、retrospective study. 呈示されたCT像は、普段見慣れない人にとっては、難しいですね。
written by NR / 2007.05.23 21:14
NR先生

コメントありがとうございます。見慣れてない人はほんと難しいと思います。
written by なんちゃって救急医 / 2007.05.24 16:19

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女子プロレス頭部外傷 (マイアミの青い空)
http://blog.m3.com/Neurointervention/20070502/1

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http://blog.m3.com/Neurointervention/20070201/1

 


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