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夏、皮膚科地雷にもご用心 [救急医療]

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 早いもので、2007年も、もう6月だ。これから夏に向けて、救急疾患も夏特有の疾患が現れて来る。熱中症は、そのひとつかもしれない。熱中症に潜む地雷は、当ブログでも一度取り上げた。→ 一人歩きしてしまった病名 

さて、夏に関して、皮膚科的な地雷をご存知の方も多いと思うが、本日は、それをネタにしてみたい。

症例   55歳男性   左手の疼痛、腫脹、皮疹

ある夜間の時間外来。一人の男性が訪れた。当院内科に肝硬変でかかりつけの患者だ。慢性貧血もあり鉄剤を内服しているとのこと。。 昼過ぎから、左手が痛み、腫れてきたとのこと。皮疹も出現してきて、様子を見ていたが、だんだん皮疹も広がってくるようで心配になって来院した。来院時、体温38.5度。皮疹の様子は下図の通り。二日前に、河口へ釣りにでかけ、そこで釣った魚を友人たちと食べたという。一緒に食べた友人には、現時点でとくに変わった様子はないとのこと

(症例は、2000年7月25日 朝日新聞 東京朝刊の記事を元にして作成しました。)

キーワードは、肝硬変、鉄剤、河口で釣り、魚を食べた、短時間で変化する皮疹

さて、いかがでしょうか? 皮膚科地雷として、ピンときますでしょうか?



結局患者は、入院したものの、その二日後に死亡した・・・・・・・・・

答えは、ビブリオ・バルニフィカス感染症でした。 参考URLはこちら。(写真もここからの引用です)

夏の恐ろしき感染症でした。 私は、かつて勤務した病院で、二例ほど、間接的に遭遇しました。いずれも肝硬変を持っている方でした。 

もし、今の厳しい医療事情・・・・、これを見逃し、訴訟になったら、勝ち目は無いかもしれません・・・・
これからの季節、皆さん気をつけましょう。

本日の教訓
夏、肝硬変患者の皮疹には、魚や海水の接触歴を確認しよう


以下、ネタ元の記事の引用です

猛暑の海に人食い菌 千葉で男性が死亡 肝臓病の人、生魚に注意
2000.07.25 東京朝刊 31頁 1社会 (全618字) 
 

数時間から数日で手足が壊死(えし)する人食いバクテリア症を起こす細菌に千葉県の男性が感染し、先月死亡していたことが二十四日、分かった。このほか、今月に入って九州や大阪で重症者が出ている。生の魚介類から感染し、肝硬変など重い肝臓障害のある人がかかりやすい。専門家は「猛暑が予想されている今夏は、海水温が上がり、菌が広い範囲で増える恐れがある。肝臓病の人は生魚を避け、火を通して食べるなどの注意が必要だ」と警告している。
 この細菌はビブリオ・ブルニフィカス。先月半ば、五十代の男性が千葉県内の救命救急センターに運ばれてきた。センター関係者によると、左腕がはれ、ショック状態だった。抗生物質や輸液などの治療をしたが、二日後に死亡。壊死した腕の組織から細菌が検出された。主治医によると、この男性は肝硬変を患っており、発病の二日前に友人とつりに出かけ、釣った魚や貝をその場で食べた。同じ魚介類を食べた友人らは何ともなかった。ビブリオ・ブルニフィカスは食中毒菌である腸炎ビブリオの仲間。健康な人には病気を起こさないが、重い肝臓病の人に感染すると、数時間から数日後に手足の激痛が始まり、急激な壊死に至る症状を起こすことがある。死亡率は約七割。昨年は少なくとも四人が死亡したことが分かっている。菌は海水中にすみ、水温が二〇度を超すと増殖する。一九七八年以来、学会などで約百例が報告されており、秋田での例が最北。東京では九例、京阪神地域でも十例起きている。

 

コメント一覧
知りませんでした。しかも国内第一例目が長崎とは。勉強になりました。ありがとうございます。

written by Tai-chan / 2007.06.05 23:37

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おはようございます。知っていただいて何よりです。

by なんちゃって救急医
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8年程前、釣り針に指を引っかけた患者が腫れがひどくなったと来院した時のことです。数時間単位で指から前腕~肩にかけて腫脹、壊死をきたしました。受傷してから10時間後には患肢を切断しましたが、留まることなく壊死が広がり翌日には亡くなりました。壊死性筋膜炎を起こしていたのですが、これといった起因菌はでませんでした。後で聞いた話ですがビブリオ菌は、はじめからビブリオ菌を疑って顕鏡しなければ見つからないこともあるそうです。(ちなみに青森です。)

written by 眠らせ屋 / 2007.06.06 18:06

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眠らせ屋先生

貴重なご経験をありがとうございます。いやあ、恐いですねえ。劇症型溶血性レンサ球菌は否定されたのでしょうか?
でなければ、バルニフィカスだったのかもしれませんね。

皆様方より、多くのご経験を教えてもらえるのが、ブログを書く楽しみになっています。 ありがとうございました。

by なんちゃって救急医
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>劇症型溶血性レンサ球菌は否定されたのでしょうか?

実は、この症例の数ヶ月前に劇症型溶血性レンサ球菌の症例がありました。その時は患肢の切断でなんとか救命できました。今回の釣針の症例もそれかと考えていたのですが、検査では起因菌は判らず、そのまま患者を失ってしまいました。
バルニフィカスの事を知ったのは、その後の症例報告を検索した時です。
当時、ICUで研修中の私には釣り針を指に引っかけただけで死にいたる事があるという事実は非常にショッキングな出来事でした。

written by 眠らせ屋 / 2007.06.07 07:27

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続報ありがとうございます。
ほんとにこわいですね。

by なんちゃって救急医
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 この手の壊死性筋膜炎は肝硬変などを合併している人にしか起こらないことが知られています.原因菌はビブリオ・バルニフィカスだけでなく,エロモナス属の一部も原因菌になることがあり,同じく魚の生食で発生します.
 病理解剖等で少しずつその病態生理が明らかにされつつありますが,原因菌が腸管内で増殖し,これが門脈血流に乗って肝臓に達します.元々門脈血は無菌ではなく,腸内細菌が混じっていたりするのですが,健康な人では門脈血はすべて最大の免疫臓器である肝臓でフィルタリングされますので,大循環系に乗ることはありません.
 肝硬変などの門脈-大循環間のシャントがある場合,門脈血内に流入した大量の原因菌がそのままシャントを通じて大循環系に流れ出し,四肢の軟部組織や骨格筋に定着し,蜂窩織炎や壊死性筋膜炎を起こします.
 この疾患は壊死性筋膜炎に至ると致死率ほぼ100%です.昔,皮膚科の先生がこれを調べていて聞いた話なのですが,急性腹症と間違われて開腹した症例に救命例があるようです.日本ではなく,外国の例です.
 眠らせ屋先生の症例は局所の外傷性感染からの進展例ですのでビブリオ・バルニフィカスではなかったのかもしれません.
 私は肝臓が専門の外科医ですが,この時期に限らず,肝硬変の方は生ものを食べるのを避けるように私は指導しています.

written by 田舎の一般外科医 / 2007.06.07 11:55

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専門的見地からのコメントありがとうございます。
勉強になりました。

by なんちゃって救急医

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はじめまして。当院でも壊死性筋膜炎はここ数年で増加しています。エロモナス・ビブリオ・A群溶連菌の経験がありますが、眠らせ屋先生のご指摘のように肝機能障害のある人が夏期~秋期の魚の生食によるエロモナスやビブリオ・バルニフィカス感染からひきおこされた壊死性筋膜炎の場合は致死率が高く、外傷を契機にした壊死性筋膜炎は救命可能であったことが多かったと思います。この壊死性筋膜炎の「筋膜」とは、骨格筋の周りを包む固有筋膜ではなく、その表層の浅筋膜であるといわれ、処置の際は病巣の中心に長軸方向に皮膚切開を入れ固有筋膜の表面を近位方向につたうように病変を追いかけていくことになります。深層の固有筋膜はバリヤーとなり、それよりも深く壊死が浸潤することは少ないようです。そのため最近は切断よりも皮下組織の広範囲デブリドマンをおこなうことが多いようです。自分は以前溶連菌感染に対してこの処置を行い、皮膚も含めた壊死部分をどんどん除去していったら最終的には片足が理科の骨格標本のように骨と筋肉だけになりましたが、最終的には植皮をおこない患肢の温存はできました。また最近では蜂窩織炎や壊死性筋膜炎の鑑別に困難な事も多いためあまり区別せず「重症軟部組織感染症」と分類されてきているようです。いずれにせよ救急外来では全身状態をみて、場合によっては緊急のデブリドマン・これらの起因菌を想定した複数の抗生剤投与、エンドトキシン吸着や持続透析を行うことが重要のようです。

written by 整形凹橋 / 2007.06.13 22:33

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はじめまして。勉強になります。ありがとうございます。
いろんな専門家の方から、いろいろ教えていただけるのはとてもありがたいです。

by なんちゃって救急医

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