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引継ぎに潜む地雷 [救急医療]

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時間外診療の現場において、引継ぎの時間帯は、危険ゾーンです。報道記事を引用します。

2002年4月11日 地方版夕刊

○○大で、昨年X月、第△△内科の研修医が血液検査で重度の貧血を見逃したため、まもなく患者が虚血性の脳梗塞で意識不明となり、今月2日に死亡したことが、11日わかった。病院は、医療ミスを認め、すでに遺族に謝罪し、近く補償交渉に入るという。同病院によると、死亡したのは、S市内の70代男性。昨年X月25日、外来で胃カメラなどの検査を受け帰宅した後、痙攣などを訴え、5日後に再受診。その際、担当した20代の研修医が血液検査の結果を確認しないまま、
「点滴後に帰宅させてよい」と別の研修医に引継ぎ、男性を帰宅させた。その夜、男性は再び体調を崩し入院、脳梗塞で意識不明となった。病院の調べで、血液検査の結果、重度の貧血で輸血が必要な状態だったことがわかった。男性は、意識が戻らないまま、多臓器不全で死亡した。第△△内科の教授は、「検査結果を未確認のまま、不十分な引継ぎをしたのが一番の問題。再発防止に努めたい」と話している。

いかがでしょうか? この事例の全体を考えながら論じることは、報道記事一つからだけでは、到底不可能ですが、研修医間の引継ぎが悪かったのが死亡の原因といわんばかりの記事の論調になっています。私は、この事例はとかげのしっぽきりではないかと疑っています。しかし、疑うだけで、それ以上論理的に考える材料がありませんので、今日の論点は、「引継ぎ」というところに主眼をおいてみたいと思います。

数ある研修指定病院の中で、時間外診療の引継ぎが大変厳しい病院と甘甘の病院といろいろとあるようです。私は、両方ともその雰囲気を知っていますが、引継ぎが厳しいほうが、地雷回避のスキル習得という面においては有用であるとの感を持っています。

引継ぎの時間帯は、なぜ危険なのか?いくつか考えてみました。
1) 引き継ぐ側は、仕事の終了間際であり、疲労のため判断力がおちているかもしれない。
2) 引き継ぐ側は、どうせ、引き継ぐからいいやという気持ちが入ると、診療に力が入らない。
3) 引き継がれる側は、引継ぎ側の提供する情報で、かえって視野狭窄に初めから陥ってしまうことがある。
4) 引き継がれる側は、その時点で、帰宅などの方針を言われると、自分で考える気がしなくなる。
5) 引き継がれる側は、なんども患者に同じ事を聞くことをためらいがちになり、病歴などが不十分になりがちである。

新聞記事は、4)のパターンにあたるのではないかと思われます。

次は、私の身近で起きた事例です。

50代男性 心窩部痛

開業医より、上記主訴の患者が紹介された。16時過ぎのことだった。担当した研修医Aは、開業医から直接依頼を受けていた。 
「心窩部痛の50代の男性だけれども、消化器疾患が考えやすいとは思うが、念のため、循環器の先生にも話を通しておいてくれないかね。」  
研修医Aは、他の患者もおり、忙しかったこと。18時からのカンファレンスのプレゼンターにあたっており、早く17時に仕事を切り上げて、その準備をしたいと思っていた。
研修医Aは、この患者さんを、今日の当直帯での担当である研修医Bに引き継いだ。研修医Bは、消化器内科医に話を通し、後日胃カメラの予定のもと、患者は帰宅した。開業医の「念のため循環器」は引き継がれなかったのだ。その患者は、翌日、突然に胸痛を訴え心肺停止となり、当院を再来したが、死亡した。

これは2)3)5)の要因があるでしょう。

引継ぎは、引継ぎゆえの危険さを伴います。 引き継ぐ側は、引き継がれる側を視野狭窄におとしいれないような配慮をしたプレゼンテーションが要求されます。 引き継がれる側は、可能限り、頭を白紙にして、引継ぎ情報を考える必要があります。そして、その引継ぎは、Dr同士が、カルテやフィルムや検査データをはさんで、顔を合わせて行なうことが大切かと思います。決して、電話のみで済まさないようにすることです。

まとめます。

本日の教訓
時間外診療の引継ぎの際の落とし穴に要注意!

 


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コメント 2

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moto

引越しごくろうさまです。また、新装開店をお祝い申し上げます。
ところで、貧血と脳梗塞とはどうつながってるんでしょうか?やや不思議な新聞記事ですね。
by moto (2007-07-02 17:43) 

元なんちゃって救急医

>moto様
開店のご祝辞ありがとうございます。おっしゃるとおり、貧血と脳梗塞はいまいちですねえ。自己経験では、貧血+狭心症の組み合わせのほうが多い印象があります。
by 元なんちゃって救急医 (2007-07-02 18:41) 

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