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怖い失神(1) [救急医療]

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時間外診療で遭遇する頻度の多い主訴として「失神」がある。この主訴と戦う場合のポイントは、見逃してはならない疾患を確実に引き算するということであろう。安易に、血管迷走神経反射でしょうとやると地雷にはまる。(参考:前エントリー 引き算診療の考え方

失神の主訴でやってきた患者の最終診断が、じつは○○だった・・・

これは大変バラエティーに富むので、怖い失神シリーズとして、今後もいくつかエントリーを続けてみたいと思う。今日は、その第一弾ということで。

症例  52歳 男性

元来健康。とくに病院にかかったことはないという。自営業にて定期健診をきちんと受けているかは不明。自家用車で釣りに出かけたある日、野外で失神。失神の前後を目撃したものはいない。連れが運転する車で、土曜の午前中に救急外来を受診。 来院時は、血圧 170/90 脈96整。 意識清明。 12誘導心電図は、T波の非特異的変化のみ。STEMIは認めず。担当は、虚血性心疾患疑いとして患者を入院させた。時間外の体制上、心エコーはなされず(技師不在、循環器医不在という環境)。 土日の、内科病棟の当直医は、たまたまいずれも消化器内科医だった。その日曜日の夜、「嘔吐2回、血圧90代です」と当直医へコールがあった。 当直医は、吐き気止めの対症療法のみ施行した。 
その後は、何事もなく経過した。そして、月曜日になった。
内科の朝のカンファレンスで申し送りが行われ、この患者の受け持ちが、循環器医長に決まった。 循環器医長は、午前外来だったので、この患者の心エコーを技師に頼んでおいた。 

そして、外来中の部長に技師より電話が入った。
心のう液の貯留を認めます」 

これを聞いた医長は、すぐに胸腹部の造影CTをオーダし、すぐに行ってもらった。

大動脈解離、 血栓閉鎖型ではあったものの、スタンフォードA であった。
この診断が付いた時点で、医長より私へ連絡が入り、すぐにこの患者の対応をするようにと言われた。

「あう・・・・、日に病棟で死ななくてよかった・・・・・・・ 間一髪や・・・・」と私はつぶやいた。
レトロに振り返れば、日曜日夜のイベントは・・。 考えるだけでも恐ろしい。このときにいくらか出血したのであろう。

午後には、心臓血管外科にすぐに緊急手術となった。
手術は、トラブルなく終了した。そして、患者は後日無事に退院した。

もし、病棟で患者が突然死したら、紛争にまで発展しかねないところででした。患者にとっては、本当にラッキーであったと思います。同時に、医療者側にとってもラッキーであったと思います。皆さん、救急外来の医師は、誤診というミスを犯したととりますか?  これを、有無をいわさず、誤診!と反射的に考える人は、私の前エントリー 誤診という誤報道 を参考のうえ、後知恵バイアスという人間の認知のバイアスを学んでいただいた上で、再考していただければ幸いです。

失神で患者が救急外来や時間外外来を訪れるのは、我々にとって、まさに日常です。しかし、その原因が、急性大動脈解離であるのは、どちらかというと稀の部類に属します。しかし、急性大動脈解離であれば、いつ何時急変して、心肺停止になるかわかりません。そして、この疾患で、心肺停止まで循環動態が落ちてしまえば、まず院内であっても救命は厳しいでしょう。

では、失神患者で、大動脈解離という疾患を見逃さないためにするにはどうしたらいいのでしょうか?
心エコーさえ使える環境であれば、相当有利かもしれません。FDPやDダイマーの凝固系が測定できれば、アラームサインとして機能してくれるかもしれません。
全例に、造影CTをとるわけにも行きませんし、残念ながら、私にはベスト解を持ち合わせておりません

失神患者の中には、こういう地雷疾患が隠れている可能性をいつでも考えて対応すること、患者や家族にも慎重な説明をしておくことが無難だろうと思います。

怖い失神シリーズは今後も不連続ながら続きます。まとめます。

本日の教訓
失神患者の中には、稀に大動脈緊急疾患が隠れています。ご注意ください

 


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コメント 8

コメントの受付は締め切りました
脳外科見習い

失神は脳疾患よりも心疾患のほうが圧倒的に多いのでツラいです。
by 脳外科見習い (2007-07-08 23:06) 

Dr. I

これは厳しいですねー。
初診の段階では、大動脈解離までは頭にないですね、正直。

しかし、助かって良かったです。
これでも、訴えられたら負けちゃうかもしれないですよね、今の世の中。
by Dr. I (2007-07-08 23:10) 

moto

エントリーと関係なくて恐縮ですが、昨日、ACLSの講習をすませてきました。
あれは、いいですね。
毎日、健常人相手にかんたんな手術して暮らしているので、おろそかになりがちな、危機管理意識をよみがえらせてくれます。
3ヶ月くらいしたら、また受講しようと思います。
JATECの本もさっき買って予備登録すませました。
by moto (2007-07-09 11:00) 

moto

そうそう、わたしのグループを担当していただいたインストラクターの先生は、たまたま、わたしの以前の職場の同僚でした。
久しぶりで懐かしかったです。勤務先は変わっていましたが、救急の現場でお元気そうでした。
by moto (2007-07-09 11:04) 

tさん

今までに、もしかし見逃してた人がいたかもしれないと思いぞっとします。
by tさん (2007-07-09 12:10) 

コラレス

ふ〜〜、怖いですね〜、読んでて、汗が出ました。
胸痛がないのが、またなんとも・・ですね。
ヒントは高血圧だけですか、これは辛すぎますね。
これでもしB型だったら、心エコーでも無理かもってことですね。
by コラレス (2007-07-09 15:53) 

元なんちゃって救急医

>脳外科見習い様

ですねえ。失神でそのたびに脳外科医が呼ばれるのはつらいと思います。

>Dr.I様

おっしゃるとおりですね。これを誤診と責められたらやってられません。
by 元なんちゃって救急医 (2007-07-09 17:10) 

元なんちゃって救急医

>moto様

ACLSお疲れ様でした。JATECも面白いですよ。

>tさん様

軽症でなんともない人のほうが圧倒的だけに、こういう悩みはつらいですね。

>コラレス様

もしかしたら、上手な病歴聴取で胸部症状を引き出せていたかもしれませんが、それは後になってはわかりません。大動脈解離は、ほんと地雷の中の王様ですよね。
by 元なんちゃって救急医 (2007-07-09 17:13) 

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