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いけてる検査 [救急医療]

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時間外診療の場において、診療行為を行なう場合、使えるツールは主に次のようなものだ。

1)問診・カルテから得られる情報、2)身体診察から得られる情報、3)検査から得られる情報

医療側の体制によって、できる検査は様々であるが、以下の話では、時間外で次のような検査は可能であるということを前提にしておきたい。 血液検査の一般的なもの、血液ガス、検尿、心電図、レントゲン、CT、エコー(ただし自分で)。

そのような体制下において、時に検査は強力な診断ツールとなりえる。例えば、急におこった肝機能異常などは、1)、2)だけからは、なかなか分からないが、血液の検査さえ行なえば、一目瞭然である。だれも文句がつけようが無い。さらにいえば、血液の検査は、たとえ診断には至らなくても、アラームサインとして、とても役に立つということが大きい。

ただ、血液の検査とはいっても、多くの施設では、検査項目がセット化されているのではなかろうか? 
ちなみに当院でのセット検査として「ルーチン」に含まれる項目は次の通り
CBC(RBC,Hb,Hct,MCV,MCH,PLT,WBC)、
生化(Na,K,CL,BUN,CRE,LDH,AMY,T-BIL,AST,ALT,TP,ALP,CK,CRP,UA,GLU)

しかし、当院では、カルシウムの検査はセット化されていない。したがって、1)、2)からそれなりにカルシウム値に異常があるかもしれないということを医師が考えたうえ、自分でルーチン外の検査としてカルシウムを意図を持ってオーダをしないと、3)も有用足りえない。

私は、この落とし穴で、高カルシウム血症で意識障害の患者の診断を外来でつけることができなかった経験がある。病棟当直医が気を利かせて、翌朝の採血にカルシウムを入れていたため、それで診断がついたのであった。

1)、2)を踏まえて、「ルーチン」外ではあるが、あえてオーダすることによって、一気に診断まで持っていける項目もある。本日は、そんな血液の検査項目をいけてる検査として、エントリーにしてみたい。

症例  82歳男性  入院希望

私の当直の日。晩の19時ごろ、ある老夫婦が診察室に入ってきた。奥さんは、疲れきった様子だ。患者は夫の方で、車椅子に座っている。 カルテを見ると、3日前の晩、家で転倒したということで、救急車で来院していた。外科系当直医が対応し、頭部CTを含めて問題がないとのことで帰宅させていた。その際、念のため調べておいた血液の検査で、WBC 12000、CRP 12という異常値があり、外科系当直医から内科系当直医に相談がなされていた。相談をうけた内科医は、感染症を疑い、抗生物質を処方して帰宅させていた。

来院時のバイタル BP 105/67 HR 75整 KT 37.3 RR<20 SpO2 96 であった。

このような背景をカルテから事前入手したうえで、この老夫婦に声をかけてみた。
「今日は、どうしましたか?」
最初に答えたのは、妻のほうだった。
「入院させてほしいんです。もう、疲れました・・・」

どうも、妻のほうが憔悴仕切っている様子だった。転倒後に、特に患者の調子が悪くほとんど寝たきりみたいになって、その介護にほとほと参ってるとのことであった。

患者に声をかけてみた。
「はい、○○です。」
意識は清明である。どうも、頭部打撲後の緊急事態らしくはないなと思った。

私:「何がいちばんつらいですか?」
患者:「体が痛くてねえ・・・、特に動くと・・・」

私:「それはいつ頃からですか?」
患者:「2週間前くらいからかな?」

確かに、妻は疲れきっている様子がひしひしと伝わってきた。それに、再来ではあるし、「社会的入院+原因不明の血液データ異常」という理由で入院もありかなとは思った。 しかし、せっかくだ。 この患者の病態を少し考えてみた。

そして、ひらめいた。 そして、私は上記ルーチンには含まれていないある検査を一つ追加した。

検査結果が返ってきた。 
ビンゴ!と私は確信した。その検査が異常高値だったのだ。
ちなみに、WBC11000、CRP 14と前回と著変なく その他特記事項なしであった。
もちろん、胸部レントゲンも検尿にも異常は認めない。

この結果に基づいて、入院希望に応じるだけの社会的入院という形ではなくて、ある疾患を想定しての入院加療というアセスメントをたてて、病棟当直医に申し送ることができたのだった。社会的入院で送るよりもなんとなくすっきりするではないか。

救急外来の現場において、一気に診断的決着をつけることができる便利な血液検査ではあるものの、それがルーチン化まではされていない(少なくとも当院では)検査もある。そう多くはないが。
そんなルーチン外の検査を必要時には、びしっと決めて、診断をつける
これって、いけてる検査じゃないのか? と自問自答する毎日である。

こういう診療って、やる側も知的好奇心を刺激されて、おもしろいものだ・・・ と私は思う。

今日はここまでします。 皆様のご意見を楽しみにしております。 (9月17日 記)

(9月18日追記)
では、続きです。
moto様、KKR様、山口(産婦人科)様、くらいふーたん様、欧州まん様、僻地外科医様
いろんなご意見をありがとうございました。

皆様のご指摘にもございますように、私が追加オーダしたのは、血沈(赤沈)でした。

結果、一時間値 110mmでした。

私は、この結果と上肢の挙上困難の所見、他の疾患を積極的に疑う所見が見当たらないことなどから、
リウマチ性多発筋痛症(Polymyalgia rheumatica:PMR)を一番に疑いました

ですので、側頭動脈炎の合併を示唆する所見がないかどうかを意識しながら診察の後、PMR疑いとのアセスメントでもって、病棟当直医に申し送りをしました。

リウマチや多発性骨髄腫、その他膠原病関連のさらなる鑑別作業は、入院後に引き続き行われましたが、やはりPMRが一番疑わしいいうことで、早々にステロイドが開始されました。ステロイド開始後、すぐに患者さんは劇的に良くなりました。その後、各種特殊検査の結果でも、他の特殊疾患は否定的ということもわかり、退院時診断は、PMRということで、元気に帰っていただいた症例でした。

以下、PMRに関する記述をいくつか紹介します。

臨床指導医ガイド  医学書院  P205
高齢者に多く、診断がつかずにPMRだけで寝たきりに状態になっている人もいる。治療により劇的に改善するので患者本人から非常に感謝される疾患である。膠原病で一般臨床医が治療でき、また治療しなければならないものとしてはPMRだけである。それ以外の疾患は、疑いをもった時点で、リウマチ・膠原病専門医に相談するべきである。

めざせ外来診療の達人 日本医事新報社 P57
・体のあちこちを痛がる高齢者には、PMRを鑑別に入れること!
赤沈が一時間値で100を超える場合は、PMRとmyelomaを考える

UpToDate Polymyalgia rheumatica  より
The characteristic laboratory finding in PMR and GCA is an elevation in the erythrocyte sedimentation rate that can exceed 100 mm/h. However, values below 40 mm/h are seen in as many as 7 to 22 percent of patients. This is most likely to occur in patients with limited disease and fewer systemic symptoms and in those who have been treated with corticosteroids.

※GCA:Giant cell arteritis 巨細胞性動脈炎のこと

PMRを救急外来のワンポイントの診察のみで、確診とまではいきません。しかし、相当の確率で疑うまでの評価は、血沈の値を知ることによって、可能だと思います。まとめます。

本日の教訓
血沈>100mm/hr は、いけてる検査といえるかも。


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コメント 15

コメントの受付は締め切りました
moto

うーん、リウマチ性多発筋痛症疑いで、MPO-ANCAかなあ。
血沈も大事ですよねー。SLEなんか、CRPが低値で血沈亢進、ってのが、重要な所見になります。
by moto (2007-09-17 12:43) 

KKR

セットにCKありですか
(夜中の話しているのにANCAはないのでは…)
私も血沈でpolymyalgia rheumatica ~側頭動脈炎?
by KKR (2007-09-17 15:40) 

山口(産婦人科)

産婦人科なので鑑別に自信はないのですが・・・全身倦怠感、CRP異常高値、というと筋力低下?というとこから横紋筋融解症とか・・・
でもそれだったらルーチンの検査で引っかかるはずですね。うーん、違うか?
by 山口(産婦人科) (2007-09-17 17:10) 

moto

血沈の、PMRにおける、感度・特異度ってどのくらいなんでしょうかね?
感度は高いが、特異度はかなり低そうな気がします。
他の検査か陰性・陰性っていうので、確率的にPMRは高まってはいくでしょうが、そういうのを数字で計算はできないものかなあ。
大穴で、破傷風はどうでしょうか(^^;。
by moto (2007-09-17 17:12) 

くらいふたーん

非感染症としたらすでにご指摘のようなPMR/側頭動脈炎とあと高齢初発のRAをまず考えましたが・・・
一項目の検査でビンゴ~というのはちょっといずれもつらいものがあるような・・・と考えました。
by くらいふたーん (2007-09-17 22:46) 

欧州まん

 うーんフェリチンとか・・。(AOSD?)・・でも肝胆道系酵素はあがりそうだけども・・違うかなあ・・。

 血管炎症候群?・・まあ確かに夜中にANCAはないですかねえ・・。

 他には・・・感染症ねえ・・まさか・・野兎病とか・・まさか・・。

 PMRは、鑑別で一応疑いたくなりますよねえ。

 わかりません・・。

 一応外れっぽいけどフェリチンにしてみます。
by 欧州まん (2007-09-17 23:24) 

僻地外科医

これは分からん~~。
局所的に痛いんなら偽痛風とかありそうだけど(PMRよりははるかに多い)、X-Pぐらいでしか分からんしねぇ。だいたい身体所見だけで瞬間芸で診断つくしね。

赤沈ぐらいしかないかぁ・・・
by 僻地外科医 (2007-09-18 07:32) 

りうまち内科医

こんにちは、珍しくリウマチ科疾患の提示ですので、コメント入れさせて頂きます。
PMRは比較的有名な疾患だと思われますが、当科にはたいてい診断が数週から数ヶ月付かない状態で”不明熱""原因不明の関節、筋痛”として紹介されてきます。診断を付けることが難しいというより、自己抗体がないので疑っても確定しにくい疾患なのではないでしょうか?
当科はリウマチ疾患入院症例が年間250から300程度の施設です、PMRは年間5人程度でしょう。

>motoさま
赤沈の感度はかなり高いでしょう。
特異度はないに等しいと考えています。
詳しいデータは見たことがありません。

あくまで個人的ですが関節炎のマーカーとされるMMP-3がかなりの高値(正常の8〜10倍)を示す例を多く経験しており、診断に役立つかなと思っています。
赤沈高値、すべての自己抗体陰性、MMP-3高値、悪性疾患の否定、急性から亜急性発症の病歴、高齢が診断の肝でしょうか。中年より若年者の場合は別の疾患を考えたほうが良いと思います。
悪性疾患があったとしても、PSL10mg程度ですから、手術で問題になった経験はありませんので、悪性疾患の検索が終了しなくても、治療を開始しています。悪性疾患の合併率(本来除外診断ですので合併とは言えませんが)は高いと思います。(きちんとしたデータを提示出来なくてすみません)側頭動脈炎合併は1例しか経験がありませんので、数%と思われます。

長々と失礼しました。
by りうまち内科医 (2007-09-18 12:29) 

元なんちゃって救急医

>りうまち内科医様

解説ありがとうございます。おっしゃるとおり、入院後は、いろんな特殊検査をして他の疾患を除外していました。そういう意味では、初期診断では、あくまで「疑い」の域を脱することはないと思います。MMP-3は、全く知らない話でした。ありがとうございました。
by 元なんちゃって救急医 (2007-09-18 18:58) 

moto

もし、軽い乾燥性湿疹様の皮疹があって、このケースみたいに全身の衰弱をこの数週間できたしてきて、血液検査でも何ら所見が得られないならば、「CK低値の皮膚筋炎」って地雷もありかもしれません。
http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/067_i.htmの「予後」の終りのほうにちょっとだけ書いてあります)
これは、皮膚科的地雷で、症状が皮疹だけで、全身倦怠感強いので、ついつい皮膚科で入院させちゃいます。治療抵抗性の間質性肺炎が急激に訪れて、あれよあれよという間もなく亡くなってしまいます。5~6例経験してます。全例死亡。救命例、世界的にもまだないんじゃないかなあ。
by moto (2007-09-18 19:26) 

moto

追伸)経験の少ない皮膚科の先生だと、「皮膚筋炎みたいだけど、CK低いから軽症だろう」って誤っちゃうわけです。実は反対なんですね。
by moto (2007-09-18 19:31) 

りうまち内科

>moto さま
amyopathic dermatomyositis ですね。
幸い私は経験ありません。
最近、mPSLパルス、シクロスポリン、エンドキサンパルスの三剤併用や、ガンマグロブリン大量療法併用による救命例が学会で報告されています。この三剤併用なんて怖くてちょっと手を出しかねますが、せざるをえないんでしょうね。
現時点では、救命できれば報告可能というレベルですので、予後は推して知るべしと思われます。
by りうまち内科 (2007-09-18 21:29) 

moto

>りうまち内科様
そのとうりです。
恥ずかしながら、わたしも、昔、内科研修医のころに、膠原病をやろうと思ってました。そのころは旧帝大では、皮膚科で膠原病をやってることが多く、皮膚科に入局しました。(出身の公立大では内科で膠原病やってましたが、赴任先がなかったので(^^;)
で、皮膚科で赴任してみて、皮膚科で膠原病診ることの、きわどさ実感しました。患者さん、内科入院で急変したときより、皮膚科入院で急変したときのほうが、医者を見る目がが、はるかに厳しいんですね。当たり前ですが。
なので、amyopathic dermatomyositisのような地雷には、とても敏感になりました。
(で、まあ、いろいろあって、なぜか今は、美容外科です(笑。)
by moto (2007-09-18 21:51) 

勤務医です。  

初め読んだときは 自分も PMRかなあ と思ったのですが、
CRPも白血球数も高ければ、2週間ならば 血沈は高くて当然 と考えてしまいました。
そうではないのかなあ。

で、何だか 緊急にない項目は何かは判りませんでした。
PMRは 典型的には 血沈は高値なのに CRPなどは 余り高くない と思いこんでいました。
これくらいだと 神経症状はないけれども 高齢者に多い血管炎の可能性はあるかなあ、くらいに。その点では 血沈はOKですし、次は P-ANCAでしょうかね。

ただ筋炎、とくに 慢性多発筋炎などでは 血沈は高くても CRPは高くはないことは多いですね。

amyopathic というのは 神経内科からしますと 軽度ないし軽微なmyopathicだと思います。
診察で ちょっと筋力低下あるなあとか、筋電図で所見があるとか、血清CKも(運動量などを考慮しても)いくらかでも高ければ やはり筋線維の壊死再生はあるわけだし。

神経内科からしますと、皮膚症状はないが、しかし筋組織にはperifascicular atrophyがあるなどの典型的な皮膚筋炎 adermatopathic dermatomyositis というのもあるんですが、皮膚科の先生のお怒りを買うことがあります。

で、PMRなんですが、生検筋組織には HLA-ABCが筋鞘膜にびまん性陽性になるという軽微な炎症所見がみられる という報告があります。
この報告は 当時はそんなことはありえない と多くの論文で落とされた という話ですが。
by 勤務医です。   (2007-09-18 22:35) 

りうまち内科医

>motoさま
私も入局の際、膠原病をやりたいという事だけ決めていたので皮膚科か内科か悩みました。
で、内科でやってみて判ったことは、リウマチ内科というのは臓器横断性にでる症状を、免疫システム異常という観点から考えるのですが、それぞれの臓器のエキスパートには叶わないということです。結局、ある程度専門科のそろった病院でサポートを受けなければ、自分の思うような医療は出来ない。
ある種のジレンマに陥ります。

>勤務医です。さま
>2週間ならば 血沈は高くて当然
この考えは妥当と思います。でも、この提示された患者さんはPMRとして典型例だと思います。それに気がついていると、赤沈の異常高値は意味がある検査だと思います。除外診断は残りますが、これでチェックメイト! という感じでしょうか。
by りうまち内科医 (2007-09-20 13:46) 

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