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目を惑わす心電図(2) [救急医療]

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救急初期診療において、12誘導心電図の役割は大きい。非循環器医師であっても、地雷を踏まないための心電図知識だけは、おさえておきたいところである。心電図ワールドは、こだわりだすときりがない側面がある。しかし、マニアックな知識は、救急初期診療の現場には必要ない。でも、普段は心電図に身近でない先生方にも知っておいておしい知識もある。そんなネタを本日はお伝えしたい。 

もちろん、心電図は有用であっても、それが全てではないという臨床感覚も重要である。それは、初期の一回目のだけの心電図では診断できない急性心筋梗塞の患者も存在するからである。
それに関する参照エントリ-はこちらです。 ⇒ 妻の力にはかなわない

心電図以外の背景も臨床判断にはすごく重要であることは認識の上で、あえて、本日のエントリーでは、心電図所見のみにフォーカスをあててみる。つまり、地雷を踏まないための心電図知識というものを考えてみたいと思う。

では、さっそく症例を二つ提示する。

症例1、症例2ともに、30台男性、主訴:胸痛である。 この段階で看護師によって、診察より先に12誘導心電図が施行された。本日のエントリーの趣旨から、現時点でのバイタルも症状も、2症例とも似たり寄ったりということにしておく。症例提示はここまで。

さて、皆様方は、どちらの心電図がいやだなあ?地雷的だとお感じになりますか?
ちなみにどちらの心電図も私の自験例です。



(10月28日 記)

(10月29日 追記)
moto先生、田舎の一般外科医先生、こんた先生、koba先生 コメントありがとうございました。すでに、皆様のコメントの中に、私が言いたかったことが含まれています。いつもありがとうございます。

では、続きです。まず、それぞれの心電図をみた瞬間の私の脳内反応を言語化(青字部分)してみます。

症例1
(私の脳内反応)
おお、ST上がってるな ⇒ でも、下に凸だし、V4にノッチが見えるなあ ⇒ これは、早期再分極のST上昇だな、たぶん。⇒でも、病歴と検査は重要だぞ ⇒ よし、まずはすぐに循環器をコールせずに自分達の診察からだな


こんな感じでした。 自分達で病歴をとり、簡単な検査を出して、自分達で評価をしました。病歴を取ると感冒症状や徹夜マージャンによる過労?などが出てきました。おそらく、アセスメントがまとまるまでに、患者来院から小一時間は経過していたと思います。私は大丈夫だと思ったけれども、それでも最後に循環器当直医に相談しました。心筋炎の可能性があるかどうかを慎重に循環器医師と協議しました。もちろん、可能性は0ではないが、決して高くもないというところに落ち着きました。結果、慎重な様子観察の必要性を説明しての帰宅となりました。

十分にプライマリ診療レベルで患者評価を考えた上で、なおかつ専門医とディスカッションして、対応した症例です。 「時間をかけてもいい」という判断を最初にしたからこそ、実際に時間をかけて診療したわけです。でも、心筋梗塞の人にこんなことをしては、おまぬけです。 めりはりが大切です。一般に病歴は大事ですけど、ST上昇心筋梗塞の人は病歴よりも時間が大切です

症例1の心電図所見のポイントは、早期再分極でした。 参考URL⇒http://square.umin.ac.jp/gannokai/ecg4.pdf の4P

STあがってる!!!って他科の先生がびっくりして相談されたご経験のある循環器の先生方もきっとおられることと思います。

早期再分極はよく見かける所見ですが、地雷を踏まないポイントは、たとえこれと思っても「大丈夫だ」とたかをくくらずに、慎重に病歴と併せて患者の評価を行うということだと思います。

では、症例2はどうでしょうか。

症例2
(私の脳内反応)
やばい、T波が高いかも? ⇒ でも、正常範囲ともとれるかも? ⇒ 過去と比較はできないのか? 
⇒初診だ、無理だ ⇒ ならば、AMIのT波増高の所見と考えてまずは急いで対応しよう ⇒ すぐに、病歴とエコーだ。


こんな感じでした。 急いで、病歴をさっと把握しました。 冷や汗と嘔吐が出てきました。発症間もないこともわかりました。 エコーで速攻心臓の動きを確認しました。すると前壁の動きがおかしい、動いていないようでした。 以上、ここまでの判断が約5分でした。

私は、この5分で、直ちに循環器医師をコールしました。急性心筋梗塞の治療は時間が勝負だからです。その後、直ちに緊急の血管造影が施行されました。結果、左前下行枝(#7)の100%閉塞が判明し、そのままカテーテル治療の運びとなりました。つまり、症例2は、発症(超)早期の心筋梗塞であったわけです。

症例2の心電図のポイントは、心筋梗塞の超急性期のT波増高(hyperacute T)でした。 実は、この話は過去にすでに行っています。参考エントリーはこちらです ⇒ AMIの転送を遅らせないために

というわけで、どちらが地雷的な香りがする心電図かといえば、症例2の心電図ということでした。

ただ、あくまで、心電図所見は、総合判断の中の材料の一つに過ぎないという感覚だけは忘れてほしくないと思います。

まとめます。

本日の教訓
ST上昇はあるけど、急がない ⇒ 早期再分極
ST上昇はないけど、急ぐべし!⇒ AMI発症早期のT波増高

 


コメント(13)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

コメント 13

コメントの受付は締め切りました
moto

とりあえず、下のほうが、右軸偏位で、右房負荷っぽいんじゃないでしょうか?
お客さんきたんで、またあとで。
by moto (2007-10-28 10:52) 

moto

すみません、×右軸偏移→○左軸偏移。P波は異常なさそうでした。コメント欄汚してスミマセン。
上のV3のST上昇はとりあえず循環器の先生に診てもらうかなあ。。
あと見落としてるとしたら何だろうか・・
by moto (2007-10-28 11:22) 

田舎の一般外科医

実は心電図は大の苦手なんですが・・・。

症例1は間違いなく心筋梗塞、それも前壁中隔梗塞ですね。

症例2はV1におけるP波が下向きに大きく振れていますね。左房負荷でしょうか。左軸偏位もありますね。IRBBBも?ってことは2枝ブロック???

少なくとも、2の方が嫌ですね。
by 田舎の一般外科医 (2007-10-28 23:25) 

moto

V1のP波って、やっぱりこれ異常なんでしょうかね?わたしも、ぱっと見、ここが気になって、慌ててたんで、○左房負荷→×右房負荷と書き込んじゃって、あとでよく見たら、幅が0.12無さそうだったんで、P波異常なさそう、って書いたんですが・・
IRBBBはなんでですか?V1のrsRはなさそうだけど・・
たしかに、二枝病変で胸痛→はっきりしたSTEMIに至る間もなく完全房室ブロック、だったら嫌ですね。
上の方は、やっぱりSTEMIですかね?Tがもう少し低くて、右下がりっぽいほうが典型的な気がして、わたしだと、ついつい自分一人では判断しきれなくて、誰かに相談しちゃいます。ほかに相談する人いなければ、恥かくこと覚悟で、他院に転送するだろうなあ。
下のほうが地雷だとしたら怖いなあ・・
by moto (2007-10-29 00:43) 

こんた

症例1のSTも なんか尖鋭しているように見えるTも
症例2の高度左軸偏位も

どちらもいやですねぇ
MIや電解質異常なら採血である程度は他のデータで予測、診断出来ますが
それが出来ない心電図勝負は厭です

ということで地雷というなら
症例2でしょうか? 何が起こっているか
ヘボな自分には鑑別があがらないもの...
by こんた (2007-10-29 08:34) 

moto

ちょっとひらめいてきました。
症例2は、「心筋梗塞の超急性期のテント状T」ってやつじゃないかな?こっちが地雷で、症例1のST-T上昇は、異型狭心症てことで。
再検査時には、症例1は正常に復してて、症例2はST上昇・T減高してた、ってのでどうでしょう?!
by moto (2007-10-29 09:10) 

koba

うーん。。悩ましいですね。

症例1は、心電図だけみれば、胸部誘導のST上昇は下側に凸でV3、V4にJ点のノッチのようなものも見られますし、成人の正常亜型の早期脱分極によるST上昇と思います。しかし、胸痛というエピソード(検査前確率UP)があるので、MI(前壁中隔)疑いで再検査必要ですかね。

症例2は、胸部誘導で左室肥大は否定的だろう(V1S+V6Q)所見になのに、高度の左軸変異があり、さらにV1の左房負荷所見があることから左房室のdysfunctionを疑い、心筋梗塞を疑います。急激な広範囲の虚血の場合は細胞崩壊が起きる前に、細胞仮死状態になるため機能障害だけが前面にでることもあると聞いたことがあります。

どうでしょうか?
症例2の方が、いやな感じですね。軸とP波は疲れていると見逃しやすく、一見正常に見えるため要注意と感じました。
by koba (2007-10-29 12:04) 

hiropon

心電図2は胸痛があるならば明らかにAMIですねー。
pointはV2のT波がR波よりも明らかに増高しており,胸部誘導のRR progressionがpoorです。これはIHDの所見として何ら疑いのないところです。まあV1もST上昇ありますし。Ⅲ・aVFも若干上がっている雰囲気もあり、LADが長く巻いていて下壁or側壁までかん流していたのでしょうか。

ちなみに
 hyperacute Tで見るところはV2のあたりといわれていて、その所以は移行帯がV2-V3あたりで変わるのでそのR波よりもV2.3あたりでT波が高いのはECG上では異常所見・・・・だった様な気がします。
by hiropon (2007-10-30 03:00) 

田舎の一般外科医

完全に外れですね。
まあ、胸痛で重症そうなのは心電図所見がはっきりしなくても循環器に相談していますけど・・・。

ますます心電図には自信がなくなりました。
by 田舎の一般外科医 (2007-10-30 20:52) 

こんた

poor R progression
研修医の頃、口を酸っぱくして言われていましたが
再確認です はい
by こんた (2007-10-30 22:29) 

eisho

症例1は早期再分極なんですよね。
そこで思うんですけど、V2とV3のT波が異常に高いように見えますが、目が悪いだけなんでしょうか。
by eisho (2010-04-06 16:11) 

なんちゃって救急医

> eisho様

ご指摘を受けて、改めて見直すとたしかに高いかもしれませんね。

ただ、「異様に」かどうかは、主観的でなんとも申し上げられません。
少なくとも、AMIの症例2との高さの違いは歴然ですよね。

あと、蛇足ですが、最近、早期再分極も実は危険・・・・なんて話もあるようです。(日経メディカルでちら見しました)

ここに書き残したブログも、時間とともに out of date となっていくような気がしています。

by なんちゃって救急医 (2010-04-06 16:26) 

三四郎

症例1の早期再分極の心電図はブルガタか確認したいので胸部誘導を一段あげて(第三肋間)測定して欲しかったです。でも後になれば何でも言えますから気にしないでください。
by 三四郎 (2010-07-17 09:03) 

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