So-net無料ブログ作成
検索選択

肺炎といえども [救急医療]

 ↓ポチッとランキングにご協力を m(_ _)m
  

本日は、クイズ形式の症例提示は無しです。

時間外診療で、肺炎の患者さんと遭遇することは多い。元気で健康な人の肺炎から、高齢者で施設などで寝たきりの患者さんの肺炎まで、その種類は、様々だが、入院を扱う急性期病院の時間外診療の場では、まさに日常そのものだ。

通常、肺炎の診断にはそれほ難渋することはない。発熱、咳などの症状があり、胸部レントゲンでとると肺炎の影を認めれば、診断がついてしまうからだ。(もちろん、例外的な症例や微妙な症例は多数ある。)

診断がついたら次にすることは、外来加療でいくか入院加療でいくかを総合的に考えることになる。総合的に重症度を考えたり(A-DROPなど)、細菌性か非定型などを考えたり、時には特殊な肺炎を考えたり・・・・
まあ、そんなことを考えながら、大まかな方針をまず決めていくのだ。

時に、肺結核の患者さんが混じってくることもあるのが、地雷的といえば地雷的かもしれない。そのためには、痰の検査が重要である。注意深い病歴も時にきっかけとなることもあり大事である。また、肺炎の中に肺ガンが隠れていることもありそれも要注意だ。

まあ、それでも、現在の日本において、診断のはっきりしない胸痛、腹痛、背部痛に比べると、地雷性がずいぶんと低いといえる「肺炎」という病気ではあると思う。

とはいうものの、数年前のSARS騒動を思い出せばわかるように、いつ、肺炎が恐ろしい地雷疾患となって、我々の前に猛威を振るう疾患となりえる可能性は否定できないが・・・・・。

そんな肺炎でさえ、容赦なく訴訟は存在するようだ。今日は、そんな報道記事を二つほど紹介する。

法廷=死亡の患者遺族が病院提訴-S地裁
199X.XX.XX 朝刊 23頁 (全527字) 
夫が死亡したのは病院が
肺炎にかかっていたのを見落としたためとして、F市の妻(73)ら遺族がN日までに、I郡F町のK病院を相手に合わせて約二千二百万円の損害賠償を求める民事訴訟をS地裁に起こした。訴えによると、死亡した男性は平成X年Y月2日の日曜の昼すぎ、救急外来でK病院を受診し、発熱や不整脈などの症状を訴えた。対応した医師は体温や脈を測り、脳CTや心電図を取るなどしたが、聴診や胸のレントゲン写真の撮影はしなかった。男性は異常がないとしていったん帰宅したが、容体の悪化で午後七時に再び救急外来を受診し、重症の肺炎と診断されて緊急入院。十八日に死亡した。遺族側は「病院は最初の受診の際、七十九歳という年齢や訴えから肺炎などの呼吸器系の病気を疑う注意義務があった。最初から必要な処置をしていれば死亡しなかった」と主張し、慰謝料などの支払いを求めている。訴えに対し病院側は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。            S新聞社

いやあ、この時間関係で、訴訟ですか・・・。正直たまりませんね。私達の戦略としては、一回帰宅してダメなら、再来して再評価するということは、よくやる手です。この訴訟事例の時間的経過では、そういう戦略であった可能性もあります。記事に書いてあることを真に受ければ、「聴診」をしなかったというのが、家族側の心証を悪くしたのかもしれませんが。 このケースは、最初に入院しても結果は同じであったと私は思います。
ちなみに、このケースは、後日和解となっており、裁判所は、診療と死亡の因果関係には言及しておりません。

誤診で65歳女性死亡 病院は4300万円支払え 地裁判決=T
200X.XX.XX 朝刊 31頁 (全433字) 
K町の医療法人「S内科」で入院中の妻(当時六十五歳)が死亡したのは、主治医が
急性心筋炎の症状を見逃した誤診が原因として、夫ら遺族四人が同病院を相手取り、慰謝料など約五千五百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決がX日、地裁であった。M裁判長は「適切な治療を受ける機会を与えていれば、助かった可能性は高い」として、同病院に約四千三百万円を支払うよう命じた。判決によると、妻は一九九X年X月六日、同病院で吐き気や呼吸困難などを訴え、医師が初期の肺炎と診断。同日、妻は入院したが、点滴を受ける度に吐き気を訴え、翌日から血圧が急激に低下、入院から四日後に死亡した。判決で、妻の血液検査から、急性心筋炎にかかり、低血圧による心原性のショックで死亡した可能性が高いと認定。M裁判長は「肺炎では説明のできない症状や、他の疾病と合併していた可能性を疑わせる症状が多数出現していた」と指摘した。S院長は「今後の診療の教訓として厳粛に受け止めたい」と話している。

劇症型心筋炎の経過ですね。心筋炎は、ほんとうに怖い病気です。患者さんの運命であったと思います。おそらく救命不能であった可能性が高いと私は思います。
なのに、こんな経過で、

適切な治療を受ける機会を与えていれば、助かった可能性は高い

こんなことを言う日本の裁判システムに私は失望します。

初期の段階で、 うっかりと「肺炎」などと断定的言ってしまうと、その後の経過が悪くなってしまったとき、このようなパターンで、誤診だと言って、相手から責められてしまう可能性があるということです。

「肺炎だとは思うけれど、現時点では断定はできません。人間の体には、何が起きるか分かりませんから。だから、注意深く見ていきますよ」

こういうトーンで常に病状説明をしておくのが固いかもしれないですね。


コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

コメント 4

コメントの受付は締め切りました
素直な内科医

前に公立病院にいたときに、一次救急で60歳前後の女性の喘息患者を経験しました。連日夜救急時間帯に受診(昼の診察には行かない!理由は不明ですが)パターンどうり吸入して、改善せず、点滴してやっと症状が治まり、ご帰還されました。ところが明け方再度(8時過ぎくらいでしたか)来られました。すでに救急時間受付は終了していましたのですが、治療を要求(受付事務)とのことで、一応前日の当番であった私が呼ばれました。再度点滴を始めながら、すぐに呼吸器の外来が始まるのでこのまま受診するようにと指示。私はそのまま自分の検査担当に。外来Drが胸部XPを撮影したところ左上肺野に径1センチの腫瘤が!!即刻入院になりました。そのおばさんは外来で昨晩レントゲン撮ってくれたらもっと早くわかっただの、二回目の発作も防げただのと痛くおかんむり。入院後家族も同様なことを訴えていたらしいです。確かに連日(およそ一ヶ月)来られていたので一回くらいは胸部XPがあってもよかったと思いますが、昼間に来てくれと言いたいところです。その方は残念ながら転移をしていたので、助かりませんでしたが、下手すればこんなケースでも訴訟になったかもしれないと思ったら恐ろしい。20年前の時代には訴訟なんて想像もしなかったケースですが。
by 素直な内科医 (2008-04-10 07:42) 

SDK

>適切な治療を受ける機会を与えていれば、助かった可能性は高い

このような判決がでる背景には、
「PCPSまわせば助かる」
みたいな鑑定書を書いた医者がいるはずです。

そんな意見書を書く医者の病院へ劇症型心筋炎を送り込みたいと思います。


by SDK (2008-04-10 11:30) 

yama

>素直な内科医様
もし、当直時間帯の医師がおかしいと思って「ちゃんと昼の時間帯に来るように」と指示されていたのなら患者が悪いと想いますが、その場合でも医師が悪いとなってしまうのでしょうか?どう考えても救急時間帯は精査不能です。あくまでも場つなぎ的な役目を救急外来は担っていると私は認識しています。
by yama (2008-04-10 15:46) 

doctor-d

地裁レベルは本当に被害者救済と裁判終結、つまり控訴されない判決のみを目的としています。
ですから、それをこじつける為には、医学的根拠の無い事を平気で判決に盛り込んでいます。
すなわち、医学を冒涜している訳で医師として虫唾が走りますが、社会的には他に被害者救済機構が無い為に黙認されているという事だと思います。
by doctor-d (2008-04-11 10:12) 

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。