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あなどれない頭重感 [救急医療]

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ぼんやりと頭が重い。肩もこる。疲れ気味だ・・・・・・。 こんな不快な症状に悩まされる人も多いと思う。しかし、わざわざ病院にまで足を運ぶ人は少数派かもしれない。いわゆる緊張型頭痛だ。頭痛の中で、最も多いタイプだ。 

しかし、いったん、「頭重感」という主訴を持って、病院を正式に受診すれば、私達は、気軽に緊張型頭痛として手短に診療を終わらせるわけにはいかない。 

慎重な問診、慎重なバイタルサインの解釈、慎重な身体診察、そして慎重なCT読影だ

100人の頭重感の患者を、適当なざる診察をしても、98人は、大丈夫であろう。しかし、その診療で見逃された2人の中には、恐ろしい転帰をとる地雷疾患も紛れている。

慎重な診療は、そういう2人を拾い上げるために、行うのだ

こういう努力は、なかなか、患者側には伝わりにくい。したがって、メディアも報道してくれない。
このブログのエントリー一つ一つがそういう一医療者の努力と受け取っていただくとブログ管理者としてはありがたい限りである。

医療に限界は、存在する。 だから、こういう努力をしても、不幸な転帰をむかえる人は必ず出てしまう。

残念ながら、それは事実だ。だから、国民一人ひとりが、日ごろから、運命を受け容れることができるように心の準備をしておいてほしい。どういうわけか、国は、そういうことは、決して言わないので、せめてこのブログでは言っておく。 何でも、人のせいにする国民性が、今あるとすれば、それこそが、医療崩壊の元凶であろう。

人は、死亡という結果から、時をさかのぼって考えようとする性からどうしても脱却できない悲しい習性がある。だから、たださえ、わかりにくい医療者の努力は、なかなかわかってもらえずに、あるいはわかろうとせずに、ひたすら何かミスがあったのではないかと勘ぐられ、そして訴訟へ発展していくのだろう。

普通に、医療を行ってるものから見たら、本当に逃げ出したくなるほどの悲しい現実だと私は感じる日々である。

では、本日の症例にそろそろはいります。

42歳 女性   3日続く頭重感

元来健康。3日前、出勤前に頭痛を感じたが、その日はそのまま出勤した。同日、夜、自宅で入浴中に気分不良あり、嘔吐一度あり。2日前は、朝から、頭重感は残っていたものの、その日もそのまま出勤した。
本日も同様であったため、仕事を終えたその足で、当院の夕診を初診で受診した。

来院時 バイタル  血圧 152/100 脈85 呼吸数14 体温36.4  
     意識 清明  身体所見 特記事項無し。

担当医は、緊張型頭痛だとは思いつつも、救急部の上司から、頭痛の怖さの話を聞かされているため、念のためにCTをとった。これである。
図2.jpg

さあ、この患者さん、どうしましょう? (4月9日 記)


(4月11日 記)

コメントありがとうございます。側脳室の白いハイデンシティの部分を出血と読めるかどうかが第一関門です。まさに、皆様のご指摘の通りです。では、これが出血だとしたら、病態は?と考えるのが第二関門です。病歴がかぎになります。

ポイントは、3日前の発症でした。

3日前に、何らかの基礎疾患(動脈瘤、脳動静脈奇形(AVM)、もやもやなど)をベースにくも膜下出血(SAH)を発症したと考えてみましょう。その直後であらば、その出血量にもよりますが、CTで一番出血を検出できる可能性が高いと思われます。しかし、時間が経つにつれて、髄液循環によって、最初の出血はwash out されていきます。再出血がなければ、ついには完全にwash outされてしまうでしょう。そうなった後にCTをとっても正常所見ということになります。

今回撮ったCTの写真は、一回目の出血がほとんどwash outされていて、たまたま側脳室にごく少量の血液が残存していたのでしょう。

このような病態仮説を立てると、この患者は、SAHを最も想定しないといけないということになります。

さて、SAHの地雷的な怖さは何だったでしょう? それは、このエントリーでした。SAH再出血の怖さ

ということで、この患者さんは、脳神経外科に直ちにコンサルトするとともに、髄液検査が試行されました。
結果、血清の髄液でした。 そのまま脳神経外科へ緊急入院となりました。

古い症例で、SAHをきたした疾患の最終確定診断が何であったを、フォローすることができませんでした。申し訳ございません。

SAHの怖さが、これから新たに時間外診療に出て行く先生方へ少しでも伝われば幸いです。それが、今回のメッセージです。

こんな記載もあります。ご参考ください。

ER流研修医指導医 まる秘心得47 加藤博之先生著 P90~91に、本日のエントリーの主旨と関連することが述べられている。第4脳室部分にHDAがあり、あたかも小脳内のごく小さな血腫と見間違いそうなCT像をみて、ある研修医が、これを軽い脳出血と診断しそうになるというエピソードが紹介された後、加藤先生ははこうまとめている。以下に該当部分を引用。

「チョー軽い」脳出血がくも膜下出血
その心は、CT上の血腫は、確かに小さいものですが、これは正確には血腫ではなく、第Ⅳ脳室内の出血です。このような場合には、出血の原因として動脈瘤破裂、脳動静脈奇形破裂、椎骨脳底動脈系の動脈解離などが考えられ、今後急激に悪化する可能性も否定できません。直ちに脳神経外科医に相談すべき疾患であり、脳神経外科医は上記のような疾患を考えて緊急で血管造影をする場合が多いと思います。CT所見が激しくないからといって、決っして、”かわいらしい”などと侮ってはいけません

もし、今回のような緊張性頭痛とまぎらわしい病歴でやってきたがために、帰宅の転帰となって、直後に自宅で再出血を起こして死亡したら、今の日本ではどんな評価がなされるのでしょうね? 

これは医療事故でしようか?それとも患者の運命でしょうか?

こういう症例が、これから設置されるであろう国の調査委員会でどう評価されるかが、興味あるところです。後知恵バイアスのことを自分自身になんら意識しない人が、評価者であったならば、「これはわかったはずだ、回避できたはずだ」といって批判するのはないでしょうか? 厳しい人ならば、「CTの出血を見逃したのだから、著しく標準から外れる医療だ」と言う人もいるかもしれません。もし、私が評価者の立場になったら、あくまでこのケースは診断困難な非典型な症例だったので、仕方がなかったという判定をくだすような気がします。なぜなら、病歴と来院の仕方がが非典型だからです。 おそらく、こういう事例は、評価者間でそうとう意見が割れるのではないでしょうか? きっと真実はだれにもわかりません。そもそも、真実って何よ?と感じるのは私だけでしょうか?そうして、結局は再発予防として、「CTのダブルチェックを」とかいうありきたりの結論がでるのでしょう。 医療のニーズと、提供のリソースには、物理的に大きな解離があるにもかかわらず・・・・・・・。

私は、そう感じます。

CT読影がからむくも膜下出血死亡事例の報道記事です。

200X.XX.XX 夕刊 夕社会 (全628字) 
くも膜下出血見逃し死亡 昨年2月 ○○○病院 CT画像を誤診

○○大は十九日、○○○病院で記者会見し、昨年N月にコンピューター断層撮影(CTスキャン)の頭部画像を誤診した医療ミスで、○○県内の三十歳代男性患者がくも膜下出血で死亡した、と発表した。会見した△△副学長と□□病院長の説明によると、男性は昨年N月上旬の午後十時ごろ、頭痛や吐き気を訴えて救急外来で来院した。当直の内科医師がCTスキャンを実施。
実際は、くも膜下出血が発生していたものの、風邪薬などを処方するにとどまった。男性は三日後と同月中旬にも内科系の診療科に来院したが、いずれも鎮痛剤などの処方だけで帰宅させた。三回目に来院して帰宅した夜、心肺停止状態で同病院高度救命救急センターに運ばれ、一時間後に死亡したという。その日の救命措置時のCTスキャンで、くも膜下出血を確認した。○○○病院は患者死亡後に医療事故調査委員会を設置。診療記録を調べた結果、初診時のCT画像で既にあった出血を見落としたことや、再診時でも脳神経外科や脳神経内科の専門診療科に引き継ぎしなかったことが、患者の死亡に結びついたと結論づけた。○○○病院は医療ミスを認めて遺族に謝罪、既に示談が成立したという。△△副学長は会見で「深くおわび申し上げる。全職員を挙げて再発防止に努める」と陳謝した。
XX新聞社

記事では、あっさりと次のように書いてありますが・・・・・

実際は、くも膜下出血が発生していたものの
初診時のCT画像で既にあった出血を見落としたこと

我々現場のものからしたら、これがどの程度のものであったがすごく気になります。 例えば、今回私が出したような所見のパターンでさえ、報道では、こう書かれてしまいそうな気がしています。

ほんとうに医療者が、とんでもない見落としをしていたかどうかは、結果を知らない複数の医師に、診療状況と画像だけを見せて、どのように結果の解釈が分布するのかを統計的感覚でしらべないと、上記の記事が適切な表現であるかどうかは、私には判定できません。

でも、ほとんどの人は、この記事の表現なら、「この医師の能力が低いので見落とした」と解釈するのではないでしょうか?

まとめます。

本日の教訓
出血がwash outされていく過程をイメージしながら、CT画像を眺めると、再出血前のSAH患者を診断できるかもしれない

コメント(12)  トラックバック(0) 

コメント 12

コメントの受付は締め切りました
moto

側脳室のhigh densityは、片方だけど、脈絡膜石灰化でいいのかなあ・・シルビウス裂の非対称も、スライスの問題ですよね?
皮髄境界不鮮明なところなさそうだし、脳溝も追えますよね・・そもそもマヒないから、脳梗塞のいわゆるeary CT signネタではないんだろうなっと。
症状が嘔吐・頭痛だから、地雷で画像診断がヒントだと、脳静脈血栓症だろか?MRIではわかりやすいそうですが、そういえば三角形の上矢状静脈がやや大きいような・・んなこともないか?
このCT画像からは、わたしでは、診断ムリ。脳外や救急の先生だと読み取るのでしょうか?・・
SAHの最初の出血が薄まったころとというシナリオも、もちろん忘れちゃいけません。・・あ、こっちか?だったら、髄液検査ですね。
なんか、忘れてるかなあ?・・明日になったらほかのこと思いつくかも(^^;
by moto (2008-04-10 00:14) 

沼地

側脳室近傍のhigh densityでこのスライスのみでこの条件だと出血に見えますね。
まずは成人型モヤモヤ病による側脳室近傍出血?
もっと下のレベルがあれば単純CTでもモヤモヤ血管の有無を判断できるけど。
あとは女性だから抗リン脂質抗体症候群、SLE。
これらも血管の閉塞がゆっくりおきるから梗塞にならずに側副血行路の破綻で脳室壁直下に出血する可能性がありそうだから。

ともかくMRI+MRAを撮ります。(あたりまえすぎる答えかな。)
by 沼地 (2008-04-10 10:10) 

僻地外科医

側脳室付近のHigh densityはCalcificationにしてはdensityが低いですし、やはり出血と考えるべきでしょうね。

あと、左のシルヴィウスが開大しているのか、梗塞なのか・・・。
やはりモヤモヤ病を考えるべきかと。

従ってうちでやるなら造影3DCTになると思います。
by 僻地外科医 (2008-04-10 18:18) 

内科17年目

初めまして。二次指定病院で輪番の日には眠れない当直をこなすこともある内科勤務医です。
皆さんが既にご指摘のように、出血があるように思います。さらに、もう一点、全体の脳の
萎縮がほとんどないのに比して、側脳室が大きく見えるように思います。
例えば、出血が脳室に穿破しているという解釈はいかがでしょうか?
by 内科17年目 (2008-04-11 00:12) 

内科17年目

すいません、これからどうするかですが、私の場合、この時点で脳外科医を呼んで相談します。
追加で書くような事でもありませんね。。。
by 内科17年目 (2008-04-11 00:15) 

沼地

私も追加。
少量の脳室穿破は伴っていると思うのですが、このCTの時点では水頭症は起きておらず脳外科での急ぎのドレナージの必要はないように思います。
血液、生化学、MRI+MRA(もしくは緊急でMRIができない施設では3D-CTA)まで見てから出血の原因疾患が脳外科領域のものか内科領域のものか大体の見当をつけてから引き継いだほうが嫌がられなさそう。
というのは、大概の病院で各科の当直医は救急からのコンサルテーションだけやってるわけじゃなくて自分の科の病棟を見て、自分の科のかかりつけの患者さんが救外を受診したら呼び出されてという状況なのでしょうから。
でもそれで引継ぎが遅かったから容態が悪くなったんだって訴えられたら、
それも怖いですけど。(笑
by 沼地 (2008-04-11 10:06) 

moto

沼地先生は放射線科でいらっしゃるんですか?前に逆行性の虫垂炎のCT診断のところでも、わたしが四苦八苦してるところ、さらっと、正解を二行ほどで書き流していらっしゃるし。
by moto (2008-04-11 12:03) 

沼地

moto先生、大当たり〜!
バレちゃいました。
画像診断医がCT有りの症例にコメントしちゃズルですよね。(笑
子育てで半ばドロッポですが、いずれ在宅での遠隔診断なんかどうかなと考え中です。

ところでこの症例ですが、クモ膜下出血が吸収される過程で側脳室に残存するのは考えにくいのでは?
髄液の流れの向きから考えて。

やっぱり側脳室近傍に出血して、それが脳室穿破してのクモ膜下出血って思うんですが結果は不明なんですね〜。残念。

by 沼地 (2008-04-11 22:44) 

kinmuiです。

教えてください。
このCTで 出血病変側優位に 尾状核頭部付近には 
PVLのような低吸収域があるように思うのですが
これは 見かけだけでしょうか。
by kinmuiです。 (2008-04-12 11:13) 

沼地

もしかして教えて下さいは私あてでしょうか?(自意識過剰な反応。笑)
ごく軽度のPVLは有ると思いますが、この1スライスだけ見た感じでは有意な左右差では無いと思います。
あと右の放線冠に点状のlow density areaがありますよね。
拡張した血管周囲腔かごく小さな脳血管障害後の変化かは判りませんが。
なんにせよ元来健康42歳女性だったらあまり動脈硬化のリスクは無さそうですから、それにしては少し老けた頭だなって感じはします。
これで答えが基礎疾患有りだとすっきりだったんですが。(笑
ただしこのくらいの頭をドックで見たときに年齢より老けて見えますねとは言いませんけどね。(笑

あ、研修医の先生にお勧めしてるんですが、こういうトレーニングもありますよ。
http://melt.umin.ac.jp/MELT_WEB_SWFObj_Final/index.html
実際の症例は古い病変やら加齢性の変化やらがかぶっててこんなにクリアカットな症例は少ないですが。
by 沼地 (2008-04-12 12:10) 

moto

良いサイトを教えていただきありがとうございます。
ほかにも頭部CTを自習できるお勧めサイトありますでしょうか?
(腹部CTはhttp://www.qqct.jp/series_select.htmlがたいへん良かったです・・まだ全部は見切っていないのですが)
by moto (2008-04-13 11:52) 

沼地

似たようなものですが。
http://asist.umin.jp/
t-PA静注がはやりなんで。
これも適応となる症例はすごく少ないと思うんですが、患者さんやご家族などは最近は脳梗塞もお薬で治せるんでしょうなどと期待なさるようで。
報道として紹介される最新医療と現実のギャップもつらいですよね。
梗塞以外はあまりまとまった頭のサイトは知りません。すみません。
全体的なことならば、
http://www.jser.jp/index.html
ここに症例が載っているかと思いますが、私は会員じゃないのでなかを見てません。(笑、

by 沼地 (2008-04-14 09:36) 

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