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絞扼性イレウスという地雷 [救急医療]

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腹痛という主訴は、時間外診療や救急診療において、その頻度の多さという面において、確実にベスト5に入る主訴である。そんな腹痛患者に潜む地雷として、今回は、絞扼性イレウスについて紹介する。これは、大動脈瘤破裂など即死するほどの短時間ではないものの、腸管の血行障害のために、放置すれば数日で確実に死に至る病である。

イレウスの管理の難しさは、イレウスという診断ではない。

その難しさは、絞扼しているイレウス(=外科の緊急対応を絶対的に要するもの)か、絞扼していないイレウス(=内科的保存的加療でしのぐことができるもの)を適時判断していく管理面にある。理想を言えば、開腹経験豊かな外科医が初めから慎重に観察できれば良いのだが、いかんせん、臨床の現場はそう甘くはない。 

救急外来を訪れる腹痛の患者の絶対数は、圧倒的に多いのだ。 しかし、ほとんどがウイルス性腸炎などの軽症の部類だ。当然、その軽症患者の初期対応は、主として内科の医師が行うわけだ。その絶対多数の腹痛患者のうち、イレウス患者もそれなりに含まれるわけだ。だが、そのイレウス患者だけを母数としてみた場合、そこから、緊急開腹を要するイレウス患者のほうが、少数派なのだ。だから、イレウスという診断だけで、最初から外科医にすべてをお任せできない医療施設は相当に多いのではないかと思う。イレウス患者を最初に内科系の医師が診る場合、いつどのタイミングで外科に相談すべきなのかを判断するのは一筋縄でないということは、多くの人に知っておいてほしい救急の現場事情である。

イレウスの画像をネット上で勉強するとすれば、堀川先生のサイトが最も勉強になるだろう。http://www.qqct.jp/seminar_answer.php?id=732より引用する。絞扼か否かの鑑別点についての記載を紹介する。

絞扼性イレウスの診断におけるそれぞれの所見の感受性,特異性はさまざまであるが,特に,信頼性の高い有用な所見として,腸管壁の造影不良あるいは欠如,不整な”beak sign”,多量の腹水,腸間膜動静脈の位置逆転像,腸間膜濃度上昇および鬱血像が挙げられている.

確かに、今の我々の現場でも、腹水のあるイレウス患者は、いつも「やばいなあ・・」という雰囲気が発生する。ただ、腸管の染まり方や拡張腸管の走行のイメージなど、何例みても、そのたびによくわからない・・・・と悩むのが今の私の日常である。 だから、いくら勉強しても、いくら勉強しても、結局、一例、一例は、いつも冷や汗ものだ。自験例を告白する。

80代 男性  腹痛。開腹手術歴なし。
とある病院で、私が内科病棟当直をしていたときのこと。 ちょうど病院の体制が、外科の常勤医が不足し、内科サイドもその不足を協力していこうというお触れがでたばかりであった。午前0時を回ったころ、救急外来から、イレウスの患者の入院要請が私になされた。「ほんとは外科なんだろうけどなあ~、まあ、医局会の話もあったしなあ・・・」という気持ちで、この患者を診察した。こんな感じのX線をみると、我々医師は、とりあえず「イレウス」という確定診断を下す。私がみた患者の腹部X線もそんな感じ だった。さて、問題はこれからだ。これが絞扼しているかどうか、この判断がものすごく悩ましいことが多いのだ。そして、次にCTを撮った。そう、絞扼かどうかを判別するためだ。で、私は見た。悩んだ・・・・。悩んだ挙句、深夜ではあったが、外科の当直医にも救急外来に来てもらって、一緒に画像をみてもらい、一緒に患者の腹を触ってもらった。その結果は、「腸管の血流はOKのようだ。ごめん・・・内科で頼むよ、まずは。」との外科当直医からコメントをいただいた。そうして、その患者を内科で入院させた。夜が明け、朝のカンファで、消化器内科の先生がその患者の受け持ちに決まった。ところが、昼前に外科転科となり緊急手術になった。なんと、私と当直外科医が見たCT像を、放射線科の部長が朝に読影して、絞扼性イレウスの画像診断を下したのだ。放科部長は、腸管の染まり方ではなくて、腸間膜の造影効果から絞扼と判断したとのこと。かなり専門性の高い読影だった。その鶴の一声で、転科が決まり、緊急手術となった。部長の的確な読影のおかげで患者は緊急手術を受けることができたが、それでも患者は死亡した。おそるべし絞扼性イレウスである。

こんな現場体験をしているものにとって、下記裁判なんかは、まさに、明日はわが身の心境である。

損賠訴訟:○○大病院に4600万円 △△地裁、誤診認定 /XX
2006.06.01 地方版/XX 27頁 (全411字) 
○○大医学部付属□□病院(XX区)の医師が誤診し緊急手術を怠ったため死亡したとして、都内の男性(当時69)の遺族が○○大(XX区)に約5200万円の賠償を求めた訴訟で、△△地裁は31日、約4600万円の支払いを命じた。K裁判長は「遅くとも入院の翌朝には手術をすべきだった。誤診と死亡には因果関係がある」と述べた。判決によると、男性は200X年N月X日夜、腹痛を訴え、3カ月前に胃がん手術を受けた同病院に入院。
術後にかかりやすい単純性腸閉そくと診断され鎮痛剤を投与されたが治まらず、翌日夜に死亡した。解剖で死因は、血行障害を伴う複雑性腸閉そくと分かった。K判長は、鎮痛剤が効かないことや(X+1)日に2度も血圧が急低下するショック症状になったことなどを「単純性では説明できない」と指摘。1度目のショック症状が出た(X+1)日朝の時点で「複雑性」と診断し、ただちに開腹手術をすれば男性は助かったと判断した
【高倉友彰】毎日新聞社

この報道の症例は、実際の判決文を、最高裁のHPから、閲覧することが出来る。→判決文

裁判官が認定した臨床経過を経時的に書いてみる。

X日 16:00頃
心窩部痛が出現。徐々に増悪。自制不能へ。
19:35
腹痛を主訴に、救急車で来院。
20:46
ソセゴン投与。 筋性防御、ブルンベルグなし。Xpでは、明らかな二ボー像なく、CTでは、SMAに異常はなく、腹水認めず。拡張小腸は認めるが、腸管血流は保持されている。(診察医の読影)
22:30
サブイレウスの診断の元、外科入院。体温36.3。血圧170/88。WBC10000、CRP1.0。腸音良好。筋性防御、ブルンベルグなし。
23:00
腹痛の増悪。自制不可。
 
X+1日 3:00
便秘の訴えと著明な発汗。レシカルボン座薬の指示。
4:30
腹痛の増悪。自制不可。浣腸の指示。 ソセゴン投与。
7:30
尿意の訴えあるも、排尿なし。
8:10
血圧80/52。冷や汗あり。腹痛持続。意識は清明。
8:15
血液ガス検査 PH 7.239 PCO2 21.4 PO2 119.5 HCO3 8.9 BE -16.3。過換気と診断。
8:30
CVラインを確保し、プレドパの点滴が開始。血圧92/60。
9:00
血圧90/54。腹痛の訴えあり。激しい体動あり。
9:13
腹部X線検査。
9:30
血圧209/160。 プレドパ投与中止。心窩部、左右側腹部の圧痛あり。KT37度後半。腹部やや膨満しやや硬い。腸音弱め、筋性防御はっきりせず。ブルンベルグなし。
10:00
体動激しく、不明言動も出現。
10:30
血圧(触診) 92  様子観察の指示あり。
10:55
残胃病変の可能性を考え、胃内視鏡施行。結果、残胃炎の所見を認めた。血圧 89/41。
11:00
血圧105/50。体動激しく落ち着かない。
11:20
ベッドから立ち上がる行動あり。尿道バルーンがはずれる→再固定。
13:30
胃管の挿入。100mlの暗赤血性排液あり。
13:45
急激に意識レベル低下。心肺停止状態となった。直ちに蘇生処置。心拍再開する。
20:45
再度心肺停止。
21:50
死亡確認。

K裁判官の判断もわからなくないはないですが、早期に手術できたとしても、救命できたかどうかは、誰にもわかりません。現行の法の過失認定のロジックは、医療が介入する前のすでに病気で死に行く運命にあるという隠れた前提が、考慮されなさ杉と感じるのは私だけでしょうか?

まとめます。

本日の教訓
救急の現場では、絞扼性イレウスか否かの臨床判断はとても重要。
しかし、とても難しい臨床判断。

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コメント 25

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もと救急医

いつも楽しく読ませていただいております。

最近の医療裁判を見ていると、
どうしても司法の後だし判断、不確実性の無理解が目立ちます。
ただ、同時に医者の判断、カルテ記載の脇の甘さも感じます。

僕は初期研修医のときに外科の部長に散々、
イレウスの診方を叩き込まれました。
叩き込まれたといっても別に難しいことではなくて、
・腸閉塞(機械性イレウス、絞扼性イレウス)
 とただのイレウス(癒着性、便秘性など)を明確に区別すること
・後者と判断して保存的に診るのであれば、
 基本はとにかく2~3時間おきに腹を触ること。
・怪しければすぐ上級医を呼ぶのと同時血ガスを
 含めたワークアップをすること。
・手術適応は簡単でFATALOがひとつでもあれば。
  Fever
  Abdominal pain
  Tachypnea
  Acidosis
  Leukocytosis
  Oliguria



そういう観点でこの症例を見直してみると、
 23:00 :腹痛の増悪。自制不可。
  →ここで1回はワークアップするべきかも。
X+1日
 3:00 便秘の訴えと著明な発汗。
  →イレウスに座薬は余りよくないと教わりましたが。。
 4:30 腹痛の増悪。自制不可
 7:30 尿意の訴えあるも、排尿なし。
  →僕はこの辺からもう一度ワークアップするべきだと思います。
 8:10 血圧80/52。冷や汗あり。腹痛持続。意識は清明。
  →ここでさすがに手術適応だと思います。
   もっと早くても良いぐらいですが。
 8:15 血液ガス PH 7.239 PCO2 21.4 PO2 119.5 HCO3 8.9 BE -16.3。     過換気と診断。
  →これを過換気としか判断できないのなら、
   血ガスは採らないほうが良いと思います。
   あきらかに代謝性アシドーシスによるアシデミアです。
 8:30 CVラインを確保し、プレドパの点滴が開始。血圧92/60。
  →カテコラミンもいいですが、必要なのは大量輸液ですよね。
 9:00 血圧90/54。腹痛の訴えあり。激しい体動あり。
 9:30 KT37度後半。腹部やや膨満しやや硬い。
 10:00 体動激しく、不明言動も出現。
  →これ全部、絞扼のサインでは無いですか。


たしかにトンデモ裁判は多いですし、
医療の不確実性を理解しない人が多いのも事実です。

たしかに手術をしたって助からなかったかもしれません。
しかし手術をするという判断を間違えたのはたしかではありませんか。
さらにその判断は数年の臨床経験しか無い僕でもわかるくらいですから、
そんなに高度なものとは思えません。
自分の親族で同様のことが起きたら、さすがにちょっと納得できないです。


まとめると、
他の情報が無いのであまり断定的な物言いはしたくないのですが、
医師の脇の甘さ が目立つというのが実感です。

みなさんはどのようにお考えになりますでしょうか。
by もと救急医 (2008-07-26 13:38) 

なんちゃって救急医

>もと救急医様ありがとうございます。

私もこりゃ、朝の時点では開腹だろ~ と思いました。

なんで開腹しなかったのか?
そこに悪しき大学病院の風習でも関わってるんじゃないのかと邪推までしたくなります。

裁判官の認定も別にとんでもというわけでもない・・・と思いました。

ただ、早期に手術すれば、助かったはずだ という物言いには違和感を感じた次第です。 

そこから、

助かって当たりまえ、助けてあたりまえ

といった心の持ちようが世間に浸透していくきっかけとなるということを強く危惧するわけです。


by なんちゃって救急医 (2008-07-26 14:17) 

外科医のはしくれ

このような急性の経過をたどるイレウスで助かった症例を見たことがありません。おそらくは朝の時点で開腹していても、助からなかっただろうとのなんちゃって救急医先生の御意見に賛同します。

もと救急医先生の御指摘はすばらしい。このような感覚を身に付けた医師が世の中にたくさんいればこんな訴訟にはならないでしょう。しかしそれは現場になれた指導教官の元に徹底的に教育を受けた外科医、救急医だからこそ身に染み付いた診断基準だとおもいます。これを腹を触診する機会の少ない内科医他に求めるのは酷です。

しかしながら(後だしかもしれませんが)、

>8:15 血液ガス PH 7.239 PCO2 21.4 PO2 119.5 HCO3 8.9 BE -16.3。     過換気と診断。

これはまさに致命的です。私がもしも医療現場をよく知っている医師サイドの裁判官だとしても救いようが無いと思います。国試レベルの診断基準です。どの国においてもこの症例は訴訟で負けるでしょう。

なんちゃって救急医先生のこのエントリーの意図は理解しておりますが、それはさておき、この裁判所の判断は正当だと言わざるを得ません。
by 外科医のはしくれ (2008-07-26 15:14) 

yabu

いつもながら示唆に富む症例の提示ありがとうございます。

私自身は内科ですが、救急担当時は、腹痛患者が救急に来た場合には「必ず外科に一報入れろ」と、外科の研修中に刷り込まれたため、幸いにもこのような地雷には触れずに済んでいたのですが・・・。

この症例が外科に入院して、なおかつ緊急手術に躊躇があったと言うことからすると、手術を緊急で行えなかった(休日や学会出張、麻酔科不在等マンパワー不足?)のか、あるいは手術適応を判断できる上級医がいなかったのかと昨今の医療崩壊による外科医不足の影響を考えてしまいました。

つい最近も合併症の多い患者の手術を依頼したとある総合病院から「マンパワーが足りないので、他の病院へ紹介してもらえませんか」という申し訳なさそうな外科の先生の声を聞くと、うがった見方でもないのかなと思います。
by yabu (2008-07-26 17:41) 

fuka_fuka

本件で医師側に過失があったという裁判官の判断は、救急医療のプロの目から見て正当だったと評価できるのであれば、残る問題は損害評価の点に絞られますね。

「ほっとけば死ぬ」 「ただちに開腹していたとしても助かる確率は_%」 といった事情が(医療側から見て)正当に反映していれば、過失相殺(※)によって相当減額されていて然るべきではないかと思えます。

※ 損害賠償額調整の場面での「原告側の過失」は、「落ち度」の意味ではなく、「被告側に負担させるのは公平でない事情」で足りる(はず)のですが、「被告側の過失が明らか」という心証のもとでは、裁判官が恣意的に (とあえて言います)、原告側の過失や素因を無視して過失相殺をしないことがあります。
by fuka_fuka (2008-07-26 19:50) 

元外科医

acidosisの時点でヤバイですね。大学病院なら4:30ー8:15の間に何かする必要がありましたね。9時以後の開腹では既に生死の境でしょう。

後出しだからこう言えるので入院直後はこれほどの重症感が無かったのかも知れません。
by 元外科医 (2008-07-26 21:06) 

もと救急医


>なんちゃって救急医さん
「早期に手術すれば、助かったはずだ 
 という物言いには違和感を感じた次第です。」
全く同感です。たしかにそうですね。
裁判官がそう表現したのか、新聞がそうなのかはわからないですが、
おかしいですね。


>外科医のはしくれさん
>もと救急医先生の御指摘はすばらしい。
お褒め頂きありがとうございます。
私は幸運なことに、(私は今年で5年目で、スーパーローテートの初代です)
初期研修中のうちにこのブログでいうところの「地雷」の避け方を、
徹底的に教えていただいたのです。
そのひとつがイレウスに対する研修医の心構えでした。
自分としては研修医レベルの知識と思っていのですが、
3年目以降、他の病院に移ったところ「イレウス」という病名で、
ろくに手術適応がどうかも判断せず入院させ、朝まで放置している例をよくみました。
たしかに実は日本の医療レベルにおいては、
>腹を触診する機会の少ない内科医他に求めるのは酷
なのかも知れません。

しかしながら、せっかく始まった初期臨床研修制度を通じて、
このような地雷を踏まない医師を養成していくことは難しいのでしょうか。
消化器内科や外科をローテートして勉強すべきことは、
内視鏡や手術のスキルではないと思うのです。


ぜひ、みなさんと一緒に考えたいのですが、
・司法にもっと医療のセンスを周知させる方法
・裁判(刑事はもってのほかで、できれば民事も)を避けて
 紛争解決する方法
これらを医師の立場から仕掛けることはできないのでしょうか。
難しいとは思うのですが。。

by もと救急医 (2008-07-26 21:27) 

まーしー

僕も翌朝の血ガスの結果の評価はちょっとひどいかなと思いました。
その時点までの判断と対処は致し方ないかなと正直思いますが。

細かいことで恐縮ですが、もと救急医さまの書かれた

> ・腸閉塞(機械性イレウス、絞扼性イレウス)
>  とただのイレウス(癒着性、便秘性など)を明確に区別すること

ですが、機械性イレウスは当面保存的治療可の後者に入ると思われます。
癒着性イレウス・便秘性イレウスも機械性イレウスの一種です。


by まーしー (2008-07-26 21:51) 

もと救急医

>まーしーさん

まーしーさんがどういう定義で言葉を使っているかわかりませんが、
自分としては機械性イレウスはすでに手術適応です。
だって、機械的にイレウスになっているのですから、
それを取り除くことができれば治るからです。

イレウスにまつわる言葉の定義は施設間の差が結構あるようです。
僕が教わった分類はだいぶ特殊で、
教科書的では無いかもしれません。
ただ、臨床的にとても便利なのでおススメです。


僕が教わった分類は以下のとおりです。
・腸閉塞→手術適応
 ・機械性イレウス
   閉鎖孔ヘルニアが代表です。
   まだ腐っていなくても手術したほうがいいです。
   (手術せずに解除できればそれはそれでいいのですが、
    例えば、S状結腸軸捻転とか、子供の腸重積とか)
   なぜなら解除するだけで済むからです。
   腸自体は切除しなくても済む可能性が高いです。
   逆に解除しなければ腐る可能性が高いですし、
   腐ってしまったら腸の切除をしなくてはいけません。
   実はイレウス患者のCT検査はこれを見逃さないのが、
   ポイントだと思っています。
 ・絞扼性イレウス
   腐り始めています。たしかに造影CTの読みも大事なのですが、  
   全身状態と症状の評価が大事だと思います。
   FATAL(O)に代表される「腐り」のサインを見逃さず、
   手術に踏み切ることが大事だと教わりました。
・ただのイレウス→厳重経過観察
 ・癒着性
  いつ何時、絞扼するかわかったものではありません。
  レジデントを張りつきさせておくべきだと思います。
 ・その他(便秘性など)

by もと救急医 (2008-07-26 22:39) 

まーしー

> もと救急医さま

僕の言葉の定義としては以下のように考えております。

腸閉塞=イレウス(英語)

機械性イレウスの定義としては、機能性イレウス(麻痺性イレウスなど)と対比的に使用され、物理的な閉塞が原因で生じているイレウスのことで、代表的なものとしては開腹術後の癒着性イレウスがあります。中には腸管虚血を有する症例もあり、それは判断されると同時に緊急手術の適応ですが、そうでなければまずは保存的治療をするのが通常です。保存的治療でどうしても改善しない時、何度も繰り返す時にはじめて手術を検討します。

閉鎖孔ヘルニアはもちろん機械性イレウスの原因の一つになりますが、閉鎖孔ヘルニアは非常に嵌頓しやすいヘルニアのため、ほとんどの症例で腸管虚血を生じます。そのため、診断と同時に手術適応が出てきます。

もと救急医さまはおそらく機械性イレウスを虚血を生じやすい病態のイレウスという定義で考えておられると思いますが、緊急手術の適応になるイレウスとしては、絞扼性も含め腸管虚血を惹起するイレウスということで概念的には非常に的を得ていると思われます。

by まーしー (2008-07-27 11:33) 

Level3

>8:15 血液ガス PH 7.239 PCO2 21.4 PO2 119.5 HCO3 8.9 BE -16.3。     過換気と診断。
>  →これを過換気としか判断できないのなら、
   血ガスは採らないほうが良いと思います。
   あきらかに代謝性アシドーシスによるアシデミアです。

私も元救急医先生と同じことを考えました.痛みによる過換気にも係らず代謝性アシドーシス(BE-16.3)ですから実際にはもっとひどいアシドーシスが存在しています.おそらくは腸管の壊死が進行していたのでしょう.この時点ですぐ開腹術に行かなければなりません.
それより早くと言われるとちょっと判断は難しいですが,23:00の時点で悪い方を考えて開腹術の考慮はあったかと思います.今のご時世ですから...
純粋にmedicalに考えればかなり迷うところでしょう.

こういったものを「誤診」と糾弾されるとちょっとそれは,と思ってしまいます.急性腹症の判断はマニュアル的に単純にできるものではありませんから.まさにJBMになっちゃいますね.
by Level3 (2008-07-27 13:12) 

ハッスル

消化器外科を専門とするものにとって、絞扼性イレウスはやはり地雷です。

時系列の中で絞扼が顕性化することもありますし、正しい手順を踏んで脇をしめきれるものでもありません。

検査結果はどうでもいいし、持続性の疼痛を伴うイレウスは絞扼性と考えなさい、と教えられました。
減圧でコントロールされていながら、疼痛を訴えはじめて1時間程度でショックに陥った自験例からは、対応できないものも山程あります。
また、開腹しながら収拾がつかないイレウスも稀ならずあります。

専門家としてそこから何を学ぶかで、裁判とは別次元です。
by ハッスル (2008-07-28 12:29) 

doctor-d

ショック状態で手術に挑む危険性を知らずに「早期に手術さえすれば助かった。」と言っている訳ですから、この判決は同時に、手術されていた場合は「手術侵襲によって、死亡せしめた。」となっていてもおかしくないでしょうね。

都合に合わせてどうとでも言えるのが、裁判ロジックです。
by doctor-d (2008-07-28 17:24) 

puhimaru

>8:15 血液ガス PH 7.239 PCO2 21.4 PO2 119.5 HCO3 8.9 BE -16.3。     過換気と診断。
>  →これを過換気としか判断できないのなら、
   血ガスは採らないほうが良いと思います。
   あきらかに代謝性アシドーシスによるアシデミアです。

元救急医先生
そんなことが分からない人はほとんどいないんじゃないかと思いますよ。
早期に手術をしていれば助かったかもしれないという判断をされそうな裁判で、先生が当事者だったら同じ事を言うんですか?
私が当事者だったらやっぱり過換気って答えたかもしれません。
大人の事情も察した方がよろしいかと。

先日ちょっとした問題があって、偉い先生が謝罪をしました。
当然、知りませんでしたとか、問題ないと思ってましたという内容になります。
そんなわけないでしょってみんな分かってます。
でも謝罪の時に、知ってたし、問題があると思っていたけどやってしまったなんて言ったらどうなるかわかりますよね。

ABGの結果の解釈、過換気が苦しいなんていうことはみんな分かってますが、それ以外に言いようが無いんじゃないかと思います。
また、そういう認定をして公言してしまう全くの素人である裁判官にも限界を感じますね。
この症例で手術に踏み切らなかった理由は分かりませんが、後から手術み踏み切るタイミングは無かったのかと検証されているときに、実はこのABGは、、、なんて言えるわけないっていうことはちょっと考えたら分かりそうなものですけど。

新聞等を読んで真実が分かるわけないよなぁと改めて思います。

イレウスの分類について
まーしー先生の主張が一般的です。
教科書にもそう書いてあると思います。
先生のような自施設オリジナルな考え方をスタンダードだと理解をしてしまうと他施設の医師と話がかみ合わなくなってしまいますので、早期にスタンダードな覚え方をした方が今後のためになると思いますよ。
機械性イレウスが手術適応なんてハリソンに書いてありましたか?
根拠のない主張を続けるよりも、受け入れて改善した方が成長しますよ。
by puhimaru (2008-07-29 19:40) 

もと救急医です

>puhimaruさん
なかなか手厳しいですね。

自分がスタンダードなんてことは全然思っていません。
医療は病院ごとの癖が強いものですよね。
それは自覚しております。

自分は外科医ではないので、
的確にコンサルトするためにいつも考えていたのは、
・腐りのサインがあればとにかく手術をお願いする
・腐りのサインが無くても手術適応を見逃さない
この2点だけです。
そういう観点からは初期研修医時代の教えがわかりやすかったのです。

くやしいのでハリソンを調べたところ、分類は以下のとおりでした。
腸閉塞
 機械的閉塞
  腸管外病変(癒着バンド、内ヘルニア、外ヘルニアなど)
  腸管の壁内病変(癌など)
  腸管内腔の閉塞(胆石嵌頓、腸重積)
 非機械的閉塞
  麻痺性イレウスなど

治療は以下のとおりでした。
 小腸の腸閉塞
  基本的には手術
  イレウス管の適応はあってもわずか
  純粋に保存的に治療できるのは不完全閉塞のみであり、
   1)繰り返す部分的腸閉塞
   2)最近の術後に起こった部分的腸閉塞
   3)最近の汎発性腹膜炎に続発した部分的腸閉塞
  大腸の腸閉塞
   不完全閉塞でない限り保存的治療は禁忌

とまぁ、手術ばっかり書いてありました。
米国ではCTをあまり撮らないところなど、
日本とは事情は違うと思いますが。


僕は医師ですし、トンデモ判決は嫌です。
ブラックジャック並の神業を求められる覚えも無いし、
不眠不休で働けもしません。
今回のように手術すれば死ななくて済んだ
という言い方はムカつきます。

当然、マスコミからの情報ですから、
細かい事情などはわかりません。
ADLや家族の希望、もろもろわかりません。


しかし、わかる範囲の情報で言えば
今回の症例では結果はどうであれ、
手術をすべきだったのではないですか。
(手術して死んで訴えられて負けたら、そりゃトンデモ判決ですよ)
もし、職業裁判が行われるようになったとして、
みなさんは、
このケースでは日本の一般的な医療レベルとしては
手術をするべきであったと判示しませんか?
自分の家族であったとしたら納得できますか?
午前の段階で主治医に手術はしないのですか
と尋ねませんか?



最近の患者の権利意識の高まりと
マスコミと司法のめちゃくちゃさには本当にヘドが出ます。
ただ、一方で脇の甘い医師がいるのも事実です。

ブログ主さんは、
>裁判官の認定も別にとんでもというわけでもない・・・と思いました。
>早期に手術すれば助かったはずだ という物言いには違和感を感じた
>助かって当たりまえ、助けてあたりまえ
>といった心の持ちようが世間に浸透していくきっかけとなる
とおっしゃっています。自分も全く同感です。


僕はこのような裁判事例を見るたびに、
研修医がこういう目にあわないようにして欲しい。
どうか初期研修の外科ローテート中に、
内視鏡やったとか手術させてもらったとか自慢する前に、
腸閉塞を保存的に経過観察するときの恐ろしさとか、
虫垂炎の診断の難しさとか、
そんなことを勉強して欲しいなぁと思うのです。


まとまらず。すみません。






by もと救急医です (2008-07-30 00:59) 

ひろ

>早期に手術をしていれば助かったかもしれないという判断をされそうな裁判で、先生が当事者だったら同じ事を言うんですか?
私が当事者だったらやっぱり過換気って答えたかもしれません。
大人の事情も察した方がよろしいかと。

この「大人の事情」というのが患者にしてみれはたまらないんだろうと思われますね。

イレウス云々以前に謝るべきところは謝らないでどうするのか…puhimaru先生がいってるだけのことではただの隠蔽になってしまいます

トンデモな裁判やら異常なクレーマーも困りますが大人の事情でうやむやにされるのも困るのでは。(個人的にはなんらかの形で全医療の記録を録音録画記録した上での刑事罰の免除、民事の賠償金額に上限を設け回数が重なった場合は審査のうえ免許取り消し等のペナルティを、と考える立場ですが)
by ひろ (2008-07-30 10:56) 

puhimaru

一点だけ
この症例が手術適応であったことは明らかです。
手術をしなかった場合の結果もわかってますし、そこに異論のある人はいないと思います。
ただ、ABGの結果解釈について、裁判官が認めた経過というこの状況では過換気は妥当な解釈(いいわけ)かと。
つまり、真に受けてもしょうがないですよと言いたかっただけです。
ホントに担当医がそう考えていたのだとすると、日本の医療レベルから考えてスタンダードとはいいがたいかなぁと私も思います。



by puhimaru (2008-07-30 13:09) 

石部金吉

「もと救急医です」先生のコメントは非常に興味深く拝見しております

FATAL-Oは使えそうで、面白いと思います
そのように素晴らしい初期研修を何処の病院で受けたのか、
是非、教えていただきたいです

私は脳外科医ですが、初期研修医たちには
誰が見ても間違えようのない重症頭部外傷よりも、
軽症頭部外傷の中に潜む地雷を見分けろ、
と指導しています。

たぶん同じマインドですね


ところで、腸が腐りかけているか否か、
代謝性アシドーシスのほかに、
血液中CPKの上昇でみる、
という方法もあるのでは?

我流なのですみません。
どなたか教えてください
by 石部金吉 (2008-07-30 13:29) 

moto

イレウスの場合の代謝性アシドーシスってのは、腸液が多量に体外に出て、そのなかにHCO3-が含まれるので生じるわけです。だから、「腸管がくさりかけている」こととは、直接には結びつきません。
ですけど、代謝性アシドーシスきたしてくるくらいのイレウスは、かなりヤバい→腐りかけてる、っていう連想を惹起するには、いい覚え方だなあ。。と感心しました。
「腐りかけてる」ことからの直接的なパラメーターは、やはりWBC?心筋梗塞のときでも最初に上がるし、虫垂炎や腸管虚血でもあがりますね。
心筋梗塞のときのトロポニンTみたいに、特異的な腸管壊死のマーカーが見つかるといいんですけどね。
by moto (2008-07-30 16:19) 

なんちゃって救急医

皆様、たくさんのコメントありがとうございます。
いろいろな考え方があるようです。

皆様方のコメントを通して
多くのROMの方々に絞扼性の怖さが伝わればと思います。

by なんちゃって救急医 (2008-07-30 22:30) 

ハッスル

手術に踏み切る特異的な臨床検査は無いと考えています。
ご指摘の検査も陽性であれば、”保存的に経過観察する際に手術寄りで考え直してみる契機”、くらいです。
横軸に臨床経過で、縦軸に重症度を取れば、短時間に病状が変化する症例で検査結果が遅れることは容易に想像できます。

日本とアメリカで治療方針にズレがあるのは医療制度(に基づく価値観の相違)にも因るようです。
アメリカではイレウス管の適応が相当少ないと聞きました。
また、”手術後に癒着で再発する可能性”と”手術せずに一旦治まった後再発する可能性”とどちらに重きをおくか、でも違うと思います。
その結果がほとんど手術という記載につながるのではないでしょうか?
by ハッスル (2008-08-05 09:16) 

ゆうぱぱ

Stranglation ileusかどうか、確かに迷うことはありますね。
わたしは外科医を始めた頃、先輩からペンタジンでも疼痛が改善しない時はstranglation ileusのことがあるから迷わずあけた方がいいよとアドバイスを受けたことがあります。以降腹部所見、諸検査以外に参考にしています。確かに絞扼していることが多いです。
外科医としてはできれば腸切になる前に診断し絞扼を解除できるように心がけてますが、ペンタジンの効果を判断基準にしてからは腸切に至る前に絞扼を解除できる症例が増えました。CKやB.E.、Lacが動いてからでは当然腸管壊死が進んでて腸切になってしまうことが多いです。
この症例、自分だったら23時の時点で開腹することを考えます。その時点でと経過観察したとしても・・・その後の対応が・・・

by ゆうぱぱ (2008-08-30 10:40) 

ニャンコ

教えて下さい。
X日夜、腹痛を訴え救急車で救急指定S病院に搬送。
食後2時間だったせいか「細菌性腸炎」と診断。
腸炎がひどくならないようにと痛み止めは投与せず。
翌日の血液検査で白血球が15000を越していたため、午後、エコーの検査。結果、肝臓と腸の間に腹水と小腸の腫れを認めたことから「虚血性腸炎の疑いがある」と医師から説明を受け、更に造影剤を使ったCT検査を実施。結果を聞いたところ、看護師より「明日の正午前に先生から説明があります」と回答。
翌日〔2日後〕午前10時頃S病院の担当医師から電話があり、「虚血があるため転院して検査が必要」といわれ30分後駆けつけてみると担当医師からCT画像を見せられた。
腸の大部分に虚血があることを確認。本人に会ってみると黄疸が出ており意識朦朧の状態。
救急車で転院先に搬送〔医師が2人乗り込んだのでおかしいと思った〕。
検査のはずがなぜか救急救命に運ばれ「絞扼性イレウス」のため緊急手術で命に保障はないと説明を受ける。
小腸を約半分切除した。
状態が悪かったせいかICUに3日間。術後の出血が止まらず輸血1200ccを投与。
かろうじて命は助かったものの「虚血性腸炎」の疑いでCT検査をしておきながら、また、夜中に本人は腹痛を訴え脈拍も160になるなど悪化していたにも関わらず、翌日朝まで約20時間画像も見ず、放置していたことにとても憤りを感じます。
CTはすぐに結果が出るはずと医療関係者から聴きました。
これって完全に医者の怠慢ではないかと思います。
このブログで絞扼性イレウスの怖さがよく分かっただけに今でも背筋が凍る思いです。
なんちゃって救急医さん、ご意見お願いします。

by ニャンコ (2010-10-11 05:35) 

なんちゃって救急医

>ニャンコ様

大変な思いをされたことだろうと御察しします。
このブログにおいても個別の症例相談をコメントでいただくことがたまにございますが、ネットコミュニケーションの限界として個別の症例にはコメントを差し控えさせていただくという立場をとっています。ご理解のほどをよろしくおねがいします。
by なんちゃって救急医 (2010-10-11 06:20) 

なんちゃって救急医

ニャンコ様の症例相談に関するコメントにつきましては、他の方からのコメントであっても、ニャンコ様のお気持を害するであると私が判断するコメントその他私の裁量の元、コメントをいただいても非公開とすることがあります。ブログ管理上の趣旨として御了承ください。
by なんちゃって救急医 (2010-10-11 06:30) 

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