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捻転した症例の紹介 [救急医療]

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本日は、4症例を提示する。この4症例は、ある共通した病態をもっている。本日のテーマはその病態である。この病態を視野に入れておくことは救急初期診療においてとても大切なことであると思う。では、さっそく症例。

症例1 16歳 男性 左下腹部痛  (自験例ベース)

6日前より発熱、頭痛、嘔気などあり、近医(N医院)を受診していた。昨日もN医院を受診して点滴加療をうけた。その診察の際腹部触診をうけた際に嘔気が増したとのことであったがそのまま様子を見ていた。本日、11:00AM、突然左下腹部痛の激しい痛みがあり、N医院受診。激しい痛みを訴えるため、N医院では対応不能と判断され、当院を紹介された。当院来院時、意識:清明、発熱なし、その他バイタル異常なし。腹部は平坦軟であるが、疼痛のためじっとしていられない状況。 腸音は正常。 WBC6600、CRP0.0、他異常なし。

担当したのは研修医。 なんと秒殺診断。 研修医先生、GJでした・・・・・・。

症例2  28歳 女性 正中下腹部痛 (自験例ベース)

月経困難症気味で、月経時は市販の痛み止めを常用していると言う。婦人科通院歴はなし。最終月経 開始日は10日前、5日間。本日12PMより、徐々に増悪する下腹部正中部の痛みが出現。昨晩作ったカレーのせいでは?と患者も母親もしきりに訴えている。14:20PM、救急車で当院へ搬送。 症状が出始めてすでに5回嘔吐している。下痢はない。当院来院時、意識:清明、発熱なし、その他バイタル異常なし。腹部は平坦軟。診察時は痛みは自制内。下腹部正中膀胱上部あたりに圧痛認めるが、リバウンドはない。腸音は正常。WBC6400、CRP0.2。妊娠反応は(-)。

腹部エコーで、な~るほど・・・・・という感じ。 

症例3 86歳女性 右上腹部痛   (引用症例 後日引用先明示)

前日の夜から右上腹部痛があり近医受診し,腹膜刺激症状を認め急性腹症として紹介来院した。体温:38.9℃,腹部全体に圧痛,反跳痛と筋性防御がある。 腹部CTの一部を供覧。
図4.jpg

症例4  80歳男性 上腹部痛  (引用症例 後日引用先明示)

数時間前に急激に発症した腹痛で来院した。痛みは上腹部から臍周囲に及び,嘔吐や下痢は ない。体温:37.0℃,左側腹部に圧痛と筋性防御がある.腫瘤は触れない。腹部エコー検査では特記すべき所見を認めない。腹部CTの一部を供覧
図3.jpg

4症例とも共通した病態があります。症例3と症例4は、ちとマニアックかもしれませんが、共通病態として引き合いに出すことで、皆様の記憶にとどまり、日本全国のどこかで早期診断早期治療をうけられる人がでると良いなあ~と勝手に期待しながら出させていただきました。

さて、4症例の共通病態とは何でしょう? 漢字二文字です。 エントリータイトルは追記時に書き換え予定。「○○する症例の紹介」というタイトルでしたが、「○○した症例の紹介」のほうが、より日本語として適切かと気がつき、修正しました。ちなみに症例1と症例2はマークすべき緊急疾患としては普段の診療の射程内においておきたいものです。症例3と症例4は、かなりマニアックなので症例1と症例2の共通病態をヒントに想像するといいかもしれません。
(9月13日 AM記事アップ PM21 エントリータイトル修正)

(9月15日 追記)
いつもながらたくさんのコメントをいただきました。ありがとうございます。今回私が想定した病態は、皆様のご指摘どおりの「捻転:torsion」でした。捻転した臓器はその程度によりますが、血行障害を伴いそれが時間とともに組織壊死につながりますから、捻転という病態は、救急初期診療的には、マークすべき重要な病態と言えます。だからこそ、クイズ形式で今回提示させていただいた次第です。

では、症例毎に。

症例1  精巣捻転

うちの部署をかつてローテートしてくれた研修医が、いい仕事をしてくれたケースです。10代(若年)男子、突然発症の下腹部の痛み というだけで、十分に急性陰のう症を疑い、陰部視診が必要です。 研修医の先生は、それを忠実に現場で実行してくれたからこそ、秒殺診断ができたわけです。このケースは、なまじ感冒や胃腸炎くさい先行病歴があるだけに、かえってそれに引っ張られ、陰部の診察をつい忘れがちになるところでした。泌尿器科にコンサルトして、精巣捻転の最終診断が下り、捻転整復に成功し事なきを得ました。私は、先行病歴の病態と今回の捻転の病態は、それぞれ別物の病態と解釈しています。(別病態と考えるのが適切かどうかは泌尿器科の先生のご意見をお伺いしたいところではありますが・・・)  関連エントリーです ⇒ 泌尿器科領域の地雷疾患

症例2  卵巣腫瘍茎捻転

エントリー数が多くなると、いつ何を書いてきたかだんだんわからなくなってきました・・・・・・。moto先生にご指摘いただきまして初めて気がつきました。なんや、もう書いてたやんこの症例!!と。関連エントリーです ⇒ 悩ましい若い女性の下腹部痛

エコー画像はこんなかんじでしたので、これでもう茎捻転から考えなくてはいけないと考えたわけです。
torsion.jpg


で、実際婦人科の先生の診察を経てそれが確定し緊急手術の運びとなったわけでした。

症例3と症例4は、いつも現場で愛用している急性腹症のCTの著者であります堀川先生のサイトから引用させていただきました。いつもありがとうございます。どちらも頻度はそんなに高い疾患ではありませんが、体の臓器はいろんなところが捻転するもんだなあとお感じいただければ幸いです。

症例3 胆嚢捻転

http://www.qqct.jp/seminar.php?id=935 から引用させていただきました。解説などはリンク先をご参照ください。 私は一例だけ経験があります。といっても遠い昔の話ですが・・・・。もちろん自分で診断したわけではなく、外科の先生に遊走胆嚢なる概念があり、それで捻転をおこすことがあると教えられて、当時「へえええ・・・」と感心した程度の経験です。


症例4 大網捻転

http://www.qqct.jp/seminar.php?id=920 から引用させていただきました。解説などはリンク先をご参照ください。意外な臓器も捻転するんですね。これは、知識としてその存在を知っておかないと、いくら画像を診ても診断することはできないと思います。 

というわけで
○○した症例の紹介とは捻転した症例の紹介というのが今回の答えでした。

それはそれとして、このエントリー:怖い失神(3) の教訓以下のところをご覧ください。 そこで、VINDICATE+Pの話をしています。その「T」の所にTorsionの「T」を加えてみたらどうかという私見を書いています。今回の症例提示を通して皆様にもご納得いただけましたら幸いです。いずれにせよ、救急診療における地雷疾患をはずさないためには、「捻転」という病態の認識は重要であると私は思います。 最後に余談になりますが、腸捻転という表現自体は、少し素人ちっくな香がしますが、これはれっきとした地雷 絞扼性イレウスのことに他なりません。


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共通テーマ:日記・雑感

コメント 20

コメントの受付は締め切りました
moto

症例1で研修医が秒殺で診断ってことは、尿路結石かなあ。4症例とも、検尿結果が伏せられてるから(根拠になってない(^^;)、尿路に関係ありそうな気はします。症例2でエコーで「なるほど」ってのは水腎症っぽい。では、症例3、4の画像診断は?ってはなしになりますが、症例3の正中やや右より、症例4の左腹部に、massっぽいものはありますが、これが尿路とどう関係するのかがわかりません・・症例3の左腎盂は拡大しているようにも見えるので、腫瘍があってまきこんだ?
症例4は、造影CTの排泄相でしょうか、腎臓→両側尿管が白く見えます。これが、直径やや大きいような気もする・・・しかし、左右差は無いし、水腎症も無さそう。膀胱とかのレベルでの閉塞なら、左右差きたしますよねー。
2文字は「尿閉」?あるいは「血尿」?ちょっと納得いかないので、もう少し考えさせてください。
とりあえず1ゲット(^^;。

by moto (2008-09-13 13:58) 

moto

う~ん・・
追記です。
症例3の大きなmassは腸管とは隔てられてるので腹水かも。
尿路結石のときに腎盂から尿が溢出することがあるそうですが、そうだと話が収まりいいけど、こんなに大きくなるかなあ?腹膜刺激症状強いのでやはり腹膜炎ですかね?
なんで石に結びつけたいかというと、「○○する症例」の○○は「排石」かなあ?と思うもので・・「尿閉する症例」や「血尿する症例」じゃ日本語としておかしいし。
このへんが限度かなあ・・わたしの想像力では。
by moto (2008-09-13 19:19) 

元外科医

急な痛みを起こす疾患で研修医レベルで見つかる。

結石しか思いつきませんが、、、

by 元外科医 (2008-09-13 20:15) 

救急病院外科医

初めてコメントさせていただきます。

症例1はソケイヘルニア嵌頓か精巣捻転でしょう。腹部の診察ではからなず陰嚢を確認しましょう。という教訓がでてくると推察します。

症例2は虫垂炎?妊娠反応(-)で月経も終わったばかりだし・・・

症例3はこのCTだけみれば胆嚢炎でしょうか?胆嚢とすれば壁の造影が悪く壊疽性?

症例4は左上腹部のFatが周囲よりdensityが上昇してみえます。大網捻転またはpanniculitisでしょうか?周囲に炎症が波及しておらずむしろlowな隔壁のような層がみえるので大網捻転を本命にします。

とすると共通するキーワードは捻転?
だとすると症例3は胆嚢捻転と考えて、症例2は卵巣腫瘍捻転でしょうか?

うーん、症例2は自信なしです。

よろしくお願いします。
by 救急病院外科医 (2008-09-13 21:13) 

DYP

うーん.....虫垂炎とかは否定的ですし....。でも、100%否定はできないしなぁ....。
憩室炎とかでしょうか?
採尿して検尿とEnhanceCTも一応撮影しておきたいですねぇ。
by DYP (2008-09-13 21:19) 

僻地外科医

うむ~。

断言は出来ません。でも何となく~ですが
「嵌頓」した症例ということで、ヘルニアを挙げたいと思います。

 尿路結石だとすると症例3の造影CTで腎盂・尿管の拡張がないのが変だと思います。また、右上腹部のマスが気になりますね。症例4でも左臍上部のマスが気になります。

1、2が鼠径ヘルニアの嵌頓と考えると研修医レベルですぐ診断が付いたのも納得がいきますし(意外に鼠径・大腿ヘルニアを見落とす医者は多いと思います)
by 僻地外科医 (2008-09-13 21:27) 

moto

あ~なるほど。勉強になります。
ところで、症例2は、過去のエントリー216に似てませんか?
http://case-report-by-erp.blog.so-net.ne.jp/20080521
スーザン先生によると、「産婦人科医としては卵巣腫瘍茎捻以外考えられません」っていう慧眼だったですが。
by moto (2008-09-13 21:55) 

まーしー

「嵌頓」ですかね?

勝手な妄想と独断のCT読影で、以下の予想をしました。

症例1は鼠径ヘルニア嵌頓。
症例2は子宮内膜症癒着の隙間に腸が嵌頓。
症例3は大腸癌を先進部とする腸重積嵌頓。
症例4は腸間膜ヘルニア嵌頓。

症例1・2で腸音正常、というのと、症例2のエコーでなるほどがしっくりきませんが。。。
by まーしー (2008-09-13 22:01) 

まーしー

連投ですみません。

症例2も鼠径 or 大腿ヘルニア嵌頓ですね。

それなら、エコーでなるほど、になりますね。


by まーしー (2008-09-13 22:17) 

seto

キーワード共通ということ”だけ”で考えると「捻転」でしょうか

症例1は若い男性ということで精巣捻転
症例2はエコーだけでってことは卵巣嚢腫茎捻転
症例3はS状結腸軸捻転
症例4は部位からして胃軸捻転とか・・・

LDHとかCPKとかの酵素あがったりはしないんでしょうか。
by seto (2008-09-13 23:03) 

mcgee

医学部5年生です。よろしくおねがいします。

症例1は虫垂炎、尿路結石が考えられると思います。痛みの性状から考えると内臓痛、あるいは関連痛ですかね?痛みでじっとしていられない、というのが、腹膜炎ではないような気がします(腹膜炎は痛すぎてじっとしているというイメージがあります)。

症例2は妊娠、卵巣腫瘍茎捻転、卵巣出血でしょうか。

症例3はmassがみられますね。小さい黒い点は穿孔して腸内ガスが漏れているようにもみえます。

症例4も左にmassが見えますが・・・よくわかりません(>_<)

by mcgee (2008-09-14 09:18) 

もと救急医

急性期の腹痛の診断は、
病歴7割+診察1割り+画像2割くらいかなと思ってます。
(採血は0.01割)
突然発症は
やぶれる、ねじれる、つまる
のどれかと教わったことがあります。

setoさんのが目に入ってしまってからのレスなので、
ずるいかも知れませんが、
漢字2文字となると、破裂、捻転、塞栓や梗塞ですから、
この4症例に共通するとなると捻転なんでしょうか?


by もと救急医 (2008-09-14 09:29) 

僻地外科医

あ~、確かに軸捻はありそうか・・・。症例1はヘルニアの嵌頓としては痛みが強すぎる感じがしますね、確かに。腹部を触診したときに嘔気ということで除外してしまいましたが、否定要因と言うには薄弱すぎますね。
by 僻地外科医 (2008-09-14 09:59) 

石部金吉

症例1のような突然発症では「破れる、詰まる、折れる」と覚えていました。が、皆さんのコメントを見ていると「捻れる、嵌まる」も必要かな、と思います。

なので、頭文字をとって「はやつねお=芳養恒夫」という人名語呂合わせを提案いたします。

芳養というのは、和歌山県に実在する地名で、この苗字の人も多数おられるようです(by 同姓同名辞典)。
http://www.douseidoumei.net/

ちなみに、私は4例とも全く見当がつきませんでした。
まだまだ修行が必要みたいです。
by 石部金吉 (2008-09-14 11:03) 

田舎の一般外科医

キーワードは捻転と思います.

1は精巣捻転.秒殺かどうかはともかく,研修医でも診断できる.採血正常も一致.痛みでじっとしていられないのが最も特徴的.鼠径ヘルニア嵌頓で(急性期に)不穏を起こすほどの痛みが起こることはないように思います.
2は卵巣腫瘍茎捻転.エコーをすればなるほどに一番合致します.採血正常も一致.筋性防御がないも一致.
3は上腹部にこんなに壁の厚い管腔構造は胃しかないので,胃捻転ではないかと思いますが,画像しかないので何とも・・・.
4は脂肪濃度の腫瘤ですね.すると,脂肪腫や大網腫瘤の捻転を考えます.
by 田舎の一般外科医 (2008-09-14 11:04) 

radiologist

放射線科医です。
共通する病態は捻転のようですから、
1は精巣捻転
2は卵巣捻転
3は胆嚢捻転
4は大網捻転
だと思います。
4は右側に発生することが多く、このCTだけでは結腸垂炎も鑑別にあがりますが、共通する病態を考えると大網捻転でしょう

by radiologist (2008-09-14 13:45) 

沼地

捻転に一票。
でも3例目も4例目もここに提示された画像だけでは自信無し。
そういえば胆嚢捻転は実際には1例しか経験ありません。
by 沼地 (2008-09-15 08:54) 

なんちゃって救急医

radiologist先生が仰るように,3は胆嚢捻転ですね.
私自身は外科医としても放射線科医としても胆嚢捻転の経験はありませんね.

by 田舎の一般外科医 (2008-09-15 10:50)


※コメント投稿者の御意向をうけ、コメント一部変更しました。

by なんちゃって救急医 (2008-09-15 12:54) 

DYP(先日のコメントに追記の形で)

私も症例1は精巣捻転を考えましたが....
じゃあ、腹部触診での嘔気悪化は何だ?と言うことで消化器疾患を考えました。

でも、やはり「陰嚢が痛い」とはっきり口で言える患者さんは少ないでしょうし....。精巣捻転も救急治療の射程内に入れておきたいものですね。

自分も月は1回あるかないか位のペースで非常勤病院の小児科当直をしていますが、たまに来る下腹部痛の強い、特に中学生くらいの患者さんはなおさら羞恥心から陰嚢痛を訴えることはできないでしょうから、羞恥心の軽減のために親御さんに診察室からご退室いただいた上で、問診と下着を下げての視触診を行うようにしています。
by DYP(先日のコメントに追記の形で) (2008-09-15 16:01) 

うろうろドクター

普段はROMですが、呼ばれて参りました。(笑)

症例1の、
>先行病歴の病態と今回の捻転の病態は、
>それぞれ別物の病態と解釈しています。
という部分ですが、ある程度は関連しているかもしれません。

というのは、近医を受診している時点では不全捻転で、
しばらくしたら自然に元の位置に戻っていた可能性があります。
それがある時、突然に完全捻転になってしまったのではないでしょうか?

精巣は発生学的に、腎臓の近くで発生し、
血管を引き連れて陰嚢まで降りてきます。
それゆえ、精巣の被膜は腹壁の筋膜と交通しています。
(陰部にボールが当たると下腹部が痛かったり、
下部尿管結石で陰嚢に放散痛が時にあるのは、そういう理由です。)
>腹部触診をうけた際に嘔気が増した…
というのは、その辺りが理由かもしれません。

DYP先生も仰る通り、
患者本人が恥ずかしくて下腹部痛しか訴えず、
時間が経ってしまい、精巣を摘出せざるを得なかった症例には
何度もお目にかかったことがあります。


発熱、頭痛は関係ないと思います。
WBC6600、CRP0.0ですしね。
by うろうろドクター (2008-09-18 18:44) 

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