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田沢湖病院訴訟についての私見 [救急医療]

今回、救急医療に関するある医療裁判において、逆転判決がありました。
なぜ、逆転判決となったのか非常に気になるところです

今回の記事は次の通りです。

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012032800980
医療ミス、一転認める=高度病院へ転送遅れた-仙台高裁支部 (2012.03.28)

秋田県仙北市で2002年、交通事故に遭った男性が死亡したのは、搬送先病院の診断ミスで高度治療が可能な病院への転送が遅くなったのが原因として、遺族が病院設置者の同市や担当医を相手に計約1億4000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁秋田支部は28日、請求を棄却した一審秋田地裁判決を変更し、同市と担当医に計約2500万円の支払いを命じた。
 卯木誠裁判長は、担当医は男性が腰に痛みがあると訴えていたのに、視診や触診などの必要な診察をせず骨盤骨折の発見が遅れたと認定。早期に適切な治療ができる高次医療機関に搬送する決断をすべきだったとし、適切な診断と男性の転送ができていれば救命できた可能性が高いとした。
 判決によると、60代の男性は02年6月8日午後2時半ごろ、仙北市をオートバイで走行中、普通乗用車と衝突して負傷。同市立田沢湖病院に搬送後、岩手医科大付属病院へ転送されたが、同病院に向かう救急車で心肺停止となり、到着後、骨盤骨折による出血性ショックで同日夕に死亡した。
 仙北市は「判決の内容を精査し、今後の対応を考えたい」としている。(2012/03/28-19:59)


この記事からでは、経過がどうにもわかりませんので、G-Searchという有料のデータベースを使って、過去の関連記事をさがしてきました。地裁判決が出る前に、これだけの記事を書いていました。地方紙の関心の高さがうかがえます。

この記事です。

2004.12.29 河北新報記事情報 
法廷 内と外/秋田・田沢湖病院訴訟/救急医療の態勢を問う

交通事故で会社役員男性=当時(62)=が死亡したのは、応急処置を怠り治療可能な病院に転送する判断が遅れたためとして、秋田市の遺族が田沢湖病院を運営する秋田県田沢湖町に、約1億4400万円の損害賠償を求めた訴訟が、秋田地裁で行われている。なぜ早く転送できなかったのか-。遺族の問いが救急医療現場に向けられている。
 訴えによると、男性は2002年6月8日午後2時半ごろ、田沢湖町の国道でオートバイを運転中に対向車と衝突。午後3時前後に田沢湖病院に救急搬送された後、岩手医科大高次救急センターに転送されたが骨盤骨折などの重傷で同6時55分ごろ、出血性ショックで死亡した。
 搬送時、田沢湖病院は時間外で非常勤の当直医が担当し、男性をレントゲン室に運んだ。室内からは看護師が電話で院長と、「すぐには来られないのですね」などと話す声が聞こえた。
 1時間半後、男性はCT室に移され、当直医から家族に「この病院では手に負えない」と説明があった。その後男性の容体が急変、看護師が点滴しようとしたが出血多量のため処置できなかったという。
 秋田県内では現在、24時間体制で対応する救急告示医療機関が34ある。事故などで運ばれた患者のうち、高度な治療が必要な場合は秋田市や他県の救命救急センターに転送される。県医務薬事課によると、交通事故で救急搬送されたのは03年に4078人で、うち55人が死亡、9人が転送された。
 救急告示医療機関は時間外には当直医がいるが、ほとんどは1人だ。ある自治体病院の院長は「医師確保は難しい。自分の守備範囲がしっかりでき、高度な病院との連携がうまくできるかどうかが問題」と話す。
 厚生労働省の調査によると、交通事故などによる外傷で、01年に全国の救命救急センターに運ばれ死亡した患者の約4割は、適切な治療をしていれば助けることができた可能性があるという。
 厚労省研究班班長の島崎修次杏林大医学部高度救命救急センター教授は「センター以外の医療機関も含めると避け得た外傷死はもっと増えるのでは。交通事故は多発性外傷が特徴的で、脳や骨だけを見ていては不十分」と指摘。(1)救急隊員らの教育(2)医師の教育(3)救急搬送システムの整備-などを課題に
挙げる。
 田沢湖町は「時間の認識にずれがある。相応の処置はしている」と争う構え。男性の命は救えたのか。解明の場となる法廷にはカルテや関係医師の証言、医療鑑定などの証拠が提出される。

さて、これによりますと、搬送されたのは時間外ということがわかります。そして、院長を呼び出そうとしていたことがうかがえます。つまり、誠意をもって病院での総力をあげて対応しようとしていた姿勢と考えてもよさそうです。そして、CTを撮って評価をしていることがわかります。 そこまでに1時間半経過しているわけです。 しかし、最初に点滴ラインは確保していなかったのか?という疑問も生じます。いずれにせよ、最初は自分たちの範囲で頑張ったうえでの転送判断ということだけは言えそうです。大淀病院では、CTを撮らなかったことが、あれだけ徹底的にマスコミから責められたのに、この事例では、逆転判決の記事において、こういうCTを撮るなどの患者評価のプロセスは、記者編集にてカットされ、

「担当医は男性が腰に痛みがあると訴えていたのに、視診や触診などの必要な診察をせず

という書き方にまとめてくるあたり、新聞社による医療報道は、つくづく変わらんのだな~と思います。

2008年に地裁判決が出ています。スルーせずにちゃんと敗訴判決を記事にしたのは、河北新報の姿勢を評価したいと思います。

2008.04.01 河北新報記事情報 
仙北・田沢湖病院訴訟/「転送判断適切」妻子の請求棄却/秋田地裁判決

 仙北市田沢湖病院で2002年、交通事故で搬送された会社役員男性=当時(63)=が死亡したのは、治療可能な病院に転送する判断が遅れたためだなどとして、秋田市の妻子3人が同病院を運営する仙北市と治療した医師に慰謝料など計約1億4400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、秋田地裁は31日、請求を棄却した。
 金子直史裁判長は「医師は搬送を受けた後、血圧低下に対して輸液をするなど必要な措置を取った。骨盤骨折の有無や重症度もコンピューター断層撮影(CT)検査をするまでは不明で、転送を判断した時期も適切だった」と指摘した。
 判決によると、男性は02年6月8日午後2時半ごろ、仙北市田沢湖刺巻の国道46号でオートバイを運転し対向車と正面衝突。骨盤骨折などの大けがをし、搬送先の田沢湖病院から盛岡市の救急センターに転送されたが、出血性ショックで死亡した。
 傍聴していた妻子は判決後、「納得できない。代理人と話し合って控訴を検討したい」と話した。

この地裁の判決のほうが妥当だと個人的には考えます。確かに、CTは死のトンネルとも言われ、とりゃええ~というもんでもありません。そのことは、過去の私のブログでも主張した通りです。 こちらです > CT室で失われた命

もしかしたら、今回逆転したのは、また違う鑑定医が、CTを撮るぐらいだったら、転送を優先すべきだったと主張したのかもしれません。(まったくの推測です)

しかし、私は思います。 もし、そのような根拠でもって、救急車を受けた初期医療機関に賠償を課すなら、、もう一段時間を遡って、 救急隊による病院選定に過失があったのでは? という話になりませんか? 私は積極的にそう主張したいというわけでありませんが、そういう感じ方をする初療医療機関関係者は少なくないのではないかと思います。また、そういう議論の進め方をどんどんしたら、救急医療そのものが成り立ちませんよね。裁判官には、そういう全体の社会的医療バランスの中で、判決をだしてほしかったなと思います。(そもそも裁判とはそういうことを考える必要はない! というご意見を厳しくいただきそうですが、あくまで個人的希望を込めてあえてこう主張します。)

今回の判決は、最後の砦の救命センター以外の医療機関において、「診たら負け」を強く印象付ける判決だと感じました。

残念な逆転判決です。



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